■課題が浮き彫りになった迎える側の『おもてなし』

 8月3日の試合では、日本代表がトンガ代表に41対7と圧勝。至福の環境で見た我らがチームの快勝劇。RWCへ向けて準備万端、と言いたいが……。

 観客をもてなすホスピタリティへの課題が目についた。

 当日、場内への飲食物の持ち込みは一切禁止。ビン缶のみでなく、ペットボトル(すべてのサイズ)、紙パックまでもNG。そして食べ物も同様だった。その中には筆者が実際に持参していたガムやタブレットも含まれ、すべて目の前で廃棄された。

「いやぁ、そうするように言われているので……。申し訳ないのですが中の売店に並んでください」というボランティアのおじちゃん。

 スポンサーとの絡みもあるのだろうが、さすがに度が過ぎているように感じた。

 そしてコンコース内に新設されたラグビーミュージアムでのこと。

「ハーフタイムで閉館です」の一言で、中にはまだ20人前後残っているのに消灯してしまった。試合の熱気と裏腹に、そこだけ寂しい空気感になったのは、言うまでもないだろう。

「われわれは普通に巡回しろ、と言われてるだけで……。Jリーグの方が試合によっては要注意、が出ます。ラグビーは酔っ払いもあまりいない。ここまで厳しくやる必要もない、と個人的には思うけど……」

 地元の巡査はスタンドで笑いながら語ってくれた。

 横には、他県警察の名前が入った通行証を着用した人。つまりこの試合がRWCのテストケースであり、本大会ではすべての会場で同様の警備や客対応がおこなわれる可能性もある。

 素晴らしい箱や周辺環境は、徐々にできあがっている。日本代表も順調に調整ができており結果も期待される。だが、それらすべてに彩りを与えるのは、最後は人である。

 屈強な男たちがぶつかり合う、世界一の大会がやってくる。何年経っても色あせない、輝きを持ち続けるような大会になって欲しいものだ。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。