露出を決める三つの要素。フィルムにしてもデジタルにしても「写す」には一定の量の光を当てる必要がある。これを調整するのが、感度、シャッター速度、絞りの三つだ(イラスト/やまもと妹子)
露出を決める三つの要素。フィルムにしてもデジタルにしても「写す」には一定の量の光を当てる必要がある。これを調整するのが、感度、シャッター速度、絞りの三つだ(イラスト/やまもと妹子)
同じ明るさでも組み合わせは多様。絞りを1段開けたら、シャッター速度を1段落とすなどすれば、同じ明るさで写る。シャッター速度で被写体の動きが、絞りで被写界深度が変わるから、意図に応じて組み合わせを選ぶことになる(イラスト/やまもと妹子)
同じ明るさでも組み合わせは多様。絞りを1段開けたら、シャッター速度を1段落とすなどすれば、同じ明るさで写る。シャッター速度で被写体の動きが、絞りで被写界深度が変わるから、意図に応じて組み合わせを選ぶことになる(イラスト/やまもと妹子)
露出計は光の量を測る専用の機械だ。入射光式では、光源の明るさそのものを測ることになる。被写体の位置でカメラに向けて使うのが基本だ(イラスト/やまもと妹子)
露出計は光の量を測る専用の機械だ。入射光式では、光源の明るさそのものを測ることになる。被写体の位置でカメラに向けて使うのが基本だ(イラスト/やまもと妹子)

 写真における露出の役割は単に被写体が見えるように写すことだけにとどまらず、その明るさを変化させることで作者の感情を最もわかりやすく伝えられる表現技法ともいえる。同じ被写体であってもローキー/ハイキーによって見る人の印象は変わり、露出をコントロールすることで表現に幅を持たせられる。

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 表現に生かすためには、まず基準となる標準の露出を知っておいたほうがいい。見た目と同じ明るさになる露出がわかってこそ、そこからの明暗表現が可能となるからだ。

 写真の露出を変化させる方法は三つある。露出の3要素といわれるシャッター速度、絞り、ISO感度である。明るく写したいときは、センサーやフィルムに対して多くの光を当てればよい。シャッター速度ならば遅くして長い時間光を当てる。絞りなら開けて光を取り込む窓を大きくする。デジタルカメラの場合は感度を上げて明るくする方法もある。暗く写したいなら、逆にシャッター速度は速く、絞りは絞り込み光の量を少なくし、感度を低くすれば暗くなる。

■正確に計測する、入射光式の単体露出計

 露出の3要素は明暗をコントロールするとともに別の役割もある。シャッター速度を変えれば、動きのある被写体を止めたり、流したり(ブラして写す)という表現ができる。絞りを変えればピントが合って見える範囲、被写界深度を変化させ写真の奥行きを表現する。感度を変えるとフィルムであれば粒状性が変わる。デジタルでもノイズの量に差が出るので、写真の滑らかさ、ザラつき感が変わる。もちろん、このうち一つの要素だけ変えると明暗も変わってしまう。そこで、他の二つの要素で明るさを調整して補間する。例えばシャッター速度を速くして被写体の動きを止めたかったら、シャッター速度を速くすることで減ったぶんの光量を補うために絞りを開けたり感度を高くしたりする。これらのことを頭に入れたうえで露出を決定するための方法を紹介しよう。

 古くからあり、現在でも確実で安定した露出を導き出す方法として単体の露出計を使う方法をお勧めしたい。光球の部分で露出を測定する入射光式の露出計は、被写体に当たっている光の量を測定する。つまり、被写体の色や反射率に影響されず、標準の露出を導き出せる。まず、露出計に撮影するときの感度とシャッター速度、もしくは感度と絞り値を設定する。続いて、被写体の位置に持っていき、光球部分をカメラに向け測定ボタンを押す。測定された露出が表示されるので、これをM(マニュアル)の露出モードに設定したカメラに設定すればいい。設定した露出がそのまま維持されるので、(その場の明るさが変化しなければ)構図に集中して撮影できるという利点がある。

 現在のカメラはシャッターボタンを押せば、とりあえず写る。これはカメラに露出計が内蔵されていて、適切な明るさで写るようにシャッター速度や絞り、感度などが自動で調整されるからだ。このカメラのオート露出に任せるのが最も手軽な方法といえるだろう。ただしカメラに内蔵されている露出計は反射光式と呼ばれ、被写体から反射してきた光を測る方式。被写体の反射率が異なれば、同じ明るさの光の下でも露出は変わってくる。例えば、カメラの露出計は黒い服を着た人は明るく、白い服を着た人は暗く写そうとしてしまう。このため露出補正が不可欠となる。また、構図を変えるたびに明るさが変わり、露出を調整しなければならないという煩わしさもある。

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機械に頼らず人力で露出を決定する