日本では1980年代半ばごろから一般に普及した紙おむつは、働く女性の増加による家事・育児の簡略化の流れにのって需要が拡大していった。その後、高分子吸水材を使用した紙おむつの開発で吸水・保水性が飛躍的に向上し、薄型化・尿もれ対策・動きやすさ・かぶれ防止などさまざまな点での性能も高まるとともに、布おむつではなく紙おむつを使う母親が増えていった。
社団法人日本衛生材料工業連合会のデータでは、0 ~40か月の子どもの布おむつから紙おむつへの転換率は、2005 年でも94.2%。現在では99%を超えている。ほとんどの赤ちゃんが、紙おむつをあてているのである。
かつて、赤ちゃんはおむつのままおしっこをしておしりがぬれると、泣いて不快感を訴えたものだが、最近の赤ちゃんにはそれがない。研究開発の成果で、いまどきの紙おむつは、赤ちゃんが数回おしっこをしたくらいでは、もれず、におわず、肌触りもさらさら、おしりがベトつかないからだ。
それで、以前に比べて子どものおむつが外れる時期が大幅に遅くなっているという新たな問題を生んでいるという面もある。
都内で「こんぺいと幼児教室」を営む保育士の斎藤明美さんは、ここ20年ほどの紙おむつの性能の進化を肌で感じてきた。
「とくにここ数年、おむつの性能が格段に上がっていると感じます。以前はいくら紙おむつでも、おしっこが出ればにおいもするし、うっかりするともれてしまうこともありました。でも最近は、おしっこでおむつがパンパンになっていても、におわないし、もれない。注意してみていないと、おしっこが出たことにすら気づきません。そういえば、おむつがが原因でぐずる子は少なくなりましたね」
問題は、紙おむつの性能がよくなりすぎたことで、紙おむつを長時間替えてもらえない赤ちゃんが増えたことだ。紙おむつの中でおしっこを何回もして、ぶよぶよ、ずっしりした「重たすぎるおむつ」をしたまま過ごすと、腰に過度な負担がかかってしまう。