でもこの主人公と私は二つの点で大きな違いがあります。

(1)私にはアホを確実に成敗できるスキルがありません。これは、何度も戦って何度も敗れ、悔しくて眠れない日々をたくさん過ごして確信しました。

(2)私の人生の目的はアホを成敗することではありません。もちろん結果的にたくさんの人たちを難局から救いたいと思っています。私の人生の目的達成を考えると「アホと戦う」エネルギーや時間が無駄でしかないのです。そんな暇はないのです。それどころか自分の人生の目的を達成し、それを通して多くの人を救えるなら、アホに土下座だってできます。

 アホは世界中にいます。人間社会で一定の割合でアホが出てくるのは仕方ないと思います。それを一つひとつつぶしていくより、自分のやり方で、自分の人生の目的達成を通じて、多くの人を救えるならその方がずっと素晴らしいことではないかと私は思っています。

 私は自分の本の中で「それでも一度アホと戦え」と記しています。それは、アホと戦うことの意義を体感してほしいからです。それが人生の目的たると思われるならどんどんやられればいいと思います。そしてアホに勝てるスキルがご自身にあるのか確かめてほしいのです。アホは結構手強くて、ハリウッド映画のようにはいかないことが多いと思います。下手したら肉体的にも精神的にも強いダメージを受けてしまうかもしれません。是非一度は戦ってみてください。

 アホ本を是非読んでみてください。「逃げる」ことを奨励している内容ではありません。「戦う」とか「逃げる」という視点を超えて、「アホと戦う時間とエネルギーあるならそれを自分と向き合い自分をみつめることにあてて、人生の目的を見出し、それにまい進してほしい」との思いをつづった本です。

 それが「アホを成敗する」ことならばやられればいいと思います。まずは致命的にならない範囲でアホと戦ってみてください。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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