代表の10番を背負ってきた選手が外れ、それに対してものを申したのだから当然だろう。ただ、これまではどこか本音を避けるようなことしか語らなかった香川が自らの胸の内をさらけ出したその姿勢からは、並々ならぬ決意を感じさせた。2本の足でまっすぐ立ち、前を見つめ、あれほど熱を感じさせる香川を見たのは初めてだった。

 これまで、試合後のミックスゾーンで記者の質問に対応する香川は、試合の興奮を感じさせつつも、どこかリラックスした雰囲気を漂わせていることが多かった。しかし、代表落選以降の香川からは鬼気迫るオーラすら感じられる。それはもちろん、つい先ほどまで香川がピッチで発していたものの名残だ。その立ち居振る舞いは、CSKAモスクワで記者たちと「真剣勝負」を繰り広げていた時の本田圭佑を思い起こさせるものだ。香川は決して話がうまいタイプの選手ではないが、自らのプレーについて語る言葉の一つひとつからは“自分がやるんだ”という強い想いが滲み出ている。

 もちろん精神論でうまくいくほどサッカーの世界は甘くない。一方で、実力が拮抗するサッカーの世界では、監督やチームの戦術、チーム状況といったことだけでなく、コンディションや、ちょっとした気持ちの変化で選手のパフォーマンスは大きく変わることもある。ドルトムントでのブレイク以降、メンタル面のもろさを指摘されることもあった香川はビッグクラブでプレーする選手だけに課せられる大きなプレッシャーのなかで戦ってきた。その成果は昨季辺りから現れ始めていたが、代表からの落選が彼に決意を新たにさせたのは間違いないだろう。(文・山口裕平)