モリス、トランメル、シモンズ、マッティングリーの4人は、実は今年11月にベテランズ委員会の審査対象になったことが発表された。ここでの再審査で認められるという条件で、まだ殿堂入りのチャンスが残っている。ただ、これほどの実績を誇る選手でも一時は資格を喪失したという事実が、殿堂に入る難しさを物語っていると言えよう。それゆえに選ばれることの価値は大きく、だからこそ“野球人最高の名誉”なのである。

 これほど狭き門の殿堂に、将来は選ばれることが確実とみなされる日本人メジャーリーガーがいる。そう、イチローだ。3000本安打を達成しただけでなく、2001年に新人王とMVPを同時受賞、2004年に262本というシーズン最多安打記録を樹立、10年連続200安打以上、オールスター10度、ゴールドグラブ賞10度……これまでイチローが残してきた数字は燦然と輝く。日本人野手に道を切り開いたパイオニアとしての存在価値も大きいだけに、イチローの殿堂入りは数年前から間違いないと考えられてきた。

 これまで述べてきた通り、米球界における殿堂入りの難しさを考慮した上で、イチローに対する評価の高さに改めて感嘆するファンも多いだろう。引退発表前から“殿堂入り確実”と呼ばれるのはとてつもないこと。モリス、マッティングリーなど、これまで殿堂から冷遇されてきた元スーパースターは、誰よりもその凄さを理解しているに違いないのである。(文・杉浦大介)