「自分の中でやっぱり改善しないといけない部分はボール持っている時以外の部分だと思っているので。自分では、そこは意識してもっと良い選手になれるようにというのはイメージしてトレーニングしています」

 強さを追い求める過程で本来の持ち味を失ってしまうリスクもある中、自分を見失わないところに彼の活躍の秘訣があるのではと考える。一方で、守備面についてはJリーグ時代からは見違えるものがある。今はなるべく高いポジションをキープしながら、中盤にボールが入ったところで大きな相手に厳しく寄せていく。

 リエージュ戦でもタイトなプレスバックでボールホルダーを挟み込み、味方のボランチがボールを奪ったシーンがあった。それについて評価を伝えると「いや、本当は自分で奪いたいですけどね、個人的には。奪いたいですけど、結果的に後ろの味方が奪いやすくなっているだけです」と語る。つまり相手を限定し、プレッシャーをかけることで味方に奪わせるのではなく、あくまで自分で奪うつもりで行く、味方のサポートになったのは結果に過ぎないということだ。

 ハリルホジッチ監督は森岡について「長い間彼を知っているが、そこまで興味深く私をひきつけたわけではなかった。気になり始めたのはベルギーに行ってから。パフォーマンスが徐々に上がってきて、私の興味をひきつけた」と選出理由を語った。

「私のアシスタントに向こうに1週間滞在してもらって、トレーニング状況を見て、向こうの監督とも話してもらった。みんな『彼のパフォーマンスはうれしい』と言っている。もちろん伸ばすべきこともある。特に守備面、デュエルの部分だ」

 攻撃面でプラスの効果を出せる期待は高いが、同時に守備の部分は中盤でスタンダードに求められる部分をさらに伸ばしてほしいという評価だろう。

 ハリルホジッチ監督が「私の中では世界の二強国ととらえている」と語るブラジル、ベルギーを相手にどこまでプレッシャーを感じず持ち味を発揮することができるか。多くのライバルがいる中盤の攻撃的なポジションで生き残れるか、すなわちハリルジャパンに新たなオプションをもたらせるかどうかが問われることになる。(文・河治良幸)