■銀行と不動産管理業者が結託?ビジネスのカラクリ

 冒頭の千葉県の男性がサブリース契約を結ぶ時、背中を押したのは、6千万円の融資をした銀行融資担当者の一言だった。

「家賃保証が付いているこのビジネスモデルはすばらしい」

 だが、このビジネスモデルにはカラクリがあった。

 ある地方銀行の融資担当者はこう打ち明ける。

「銀行が不動産管理業者にアパート建設の顧客を紹介した場合、業者から紹介手数料を受け取る契約を結んでいる」
 銀行と業者間の手数料のやり取りはあまり知られていないが、昔から存在する。一般的に業者が銀行に支払う手数料は建築価格の3%以内とされ、銀行関係者は「銀行が銀行窓口で生命保険を販売する見返りに受け取る販売手数料と同じようなもの」と話す。

 金融庁は3月30日、銀行などに対し、顧客本位の融資を実現するよう注意を勧告。利益相反の適切な管理や手数料の明確化などを求めている。

 銀行と業者間で手数料が発生し、顧客がそのやり取りを知らされていなければ、不利益を被る可能性があるからだ。

 実際、業者が銀行に支払った手数料分を建築価格に上乗せしているか、否かは素人では判断できない。金融庁は「銀行は判断できる立場」とし、顧客本位の業務運営を求めている。

 元地方銀行の融資担当者は顧客本位とは程遠い実情をこう明かす。

「顧客は、メーンで利用する銀行からサブリース契約を紹介されれば、まず信頼する。さらに融資の確約まで得られれば、他社と比較せず金額交渉もしない。銀行への紹介手数料分が顧客の負担になり、建築価格が膨らんでもまず、わからないだろう」

■アパート融資は地方銀行のノルマ達成の頼みの綱

 ある大手地方銀行の融資担当者はこう打ち明ける。「支店の業績表彰のために、事業性融資の金額の底上げが必要になる。アパート融資を推進する理由は、高金利のほかに、アパート融資もこの事業性に組み込まれていることが要因」

 事業性融資とは、企業が手がける事業の成長性などを評価して貸し出す仕組みだ。この事業性部門は支店の要で、融資担当者にとって、アパート融資の目標達成は人事上での評価も高いという。

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