サイクリスト専用自動販売機「DNF回避君」と、設置者で自らもロードバイクをたしなむ原さん
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自販機のラインアップ。パンク修理に使うパッチや修理剤などのサイクル用品の他に、栄養補助食品、飲み物などが並ぶ
サイクル用品の売れ筋は交換用のタイヤチューブ。予備用に購入する人も多いという
疲労時の備えとして持っておきたいサプリメントも人気
自販機の側面に掲載する島内の風向き情報は、原さんが随時更新する

 特産品のタマネギだけでなく、サイクリストの“聖地”としても知られる、兵庫県の淡路島。本州と四国とを結ぶのどかな島の外周約150キロを巡る、通称「アワイチ」などが人気で、週末や休みになると、多くのサイクリストたちが海沿いの道を駆け抜ける。そんな島に、サイクリスト専用自動販売機なるものが登場し、サイクリストたちの注目を集めているという。

【写真】こんなものまで売ってるの!?サイクリスト専用自販機

 島北部からアワイチを始めた時の中間地点となる南あわじ市福良。サイクリスト専用自販機「DNF回避君」は、2017年6月末、鳴門海峡のうずしおクルーズ船が出航する福良港近く、観光客でにぎわう通りの喫茶店前に設置された。一見、普通の自販機のようだが、近づくと、そのラインナップに驚く。水や炭酸飲料などと一緒に、サイクリングに役立つ商品が並んでいるのだ。

 例えば、自転車のタイヤがパンクした時の修理に役立つ修理用パッチや交換用タイヤチューブ、修理剤に多機能工具。あまり起こってほしくはないが、転倒などでギアが折れたり、曲がったりした時の応急処置に使うエマージェンシーハンガーまである。疲労回復用に、アスリート向けの栄養補助食品やサプリメントもそろう。

「パーツ関係で一番売れているのは、タイヤチューブですね。パンクして持ってきたチューブを使ってしまい、予備用として買う人も多いです」と話すのは、自販機を設置した原拓生さん(43)。喫茶店「ジロ・デ・アワジ」やロードバイク専門レンタルショップ「島くるAwaji」を営む。

 なぜサイクリスト専用自販機を作ろうと考えたのか。ヒントは自販機の名前にあった。「DNF回避君の“DNF”は、『Did Not Finish』(途中リタイア)の頭文字。サイクリストの皆さんに、安全に完走してほしい、という願いを込めました」(原さん)

 自身もロードバイクをたしなむ原さんによると、島北部から南下し、山を越えたところにある福良周辺では、パンクやチェーンが切れるなどのトラブルに見舞われるサイクリストが多いという。このため、もともとは喫茶店で、自転車の部品や工具などを販売していた。

 だが、喫茶店の開店時間は限られている。また、混みあう時間帯はきめ細かい対応が難しい。喫茶店ということで、「気軽に入りにくい」というサイクリストもいるという。そこで思いついたのが、24時間、いつでも気兼ねなく利用できる自販機の設置だ。

 自販機メーカーに製作を依頼し、サイクリストたちが集まるフェイスブックのページで、何を置いてほしいかを募った。こうして、全国的にも珍しいサイクリスト専用自販機が完成したのだ。

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