公式戦29連勝を達成し、30年ぶりに記録を更新した藤井聡太四段。彼の強さの秘密に迫る。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞文化くらし報道部・村瀬信也さんの解説を紹介しよう。

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「自分でも信じられない。非常に幸運だった」

 6月26日、東京都渋谷区の将棋会館。将棋界で前人未到の公式戦29連勝を達成した藤井聡太四段(14)は、竜王戦の決勝トーナメントの対局を終えてそう語った。

 神谷広志八段(56)が30年前につくった記録を、デビューして1年に満たない中学生棋士が無敗のまま追い抜いた。半年前には誰も予想していない快進撃だった。

 藤井四段は昨年10月、史上最年少の14歳2カ月でプロ入りした。12月、「ひふみん」の愛称で知られる加藤一二三九段(77)とのデビュー戦に勝利。今年4月には、プロ初戦からの連勝の新記録「11」をつくった。

 その後も勢いは止まらない。「いったい、誰が止めるのか」が話題になるなか、連勝はついに29まで伸びた。中学生棋士の先輩でもある羽生善治三冠(46)は「歴史的な快挙です。ひのき舞台で顔を合わせる日を楽しみにしています」とコメントした。

 棋士たちを驚かせているのは、その勝ちっぷりだ。中盤までに優位を築いてそのまま押し切る、危なげない内容の将棋が目立つ。もともと抜群の終盤力には定評があり、中学3年生にして完成度の高さを印象づけている。

 将棋以外の面でも、中学生らしからぬ一面を見せる。読書が趣味で、司馬遼太郎や沢木耕太郎を愛読。20連勝を達成したときには「自分の実力からすると僥倖としか言いようがない」。「思いがけない幸運」を意味する難しい言葉を使い、落ち着いた口調で喜びを表現した。

 藤井四段の活躍は、テレビなどでも大々的に報じられている。扇子やクリアファイルといった「藤井グッズ」が次々と完売し、各地の将棋教室には問い合わせが相次ぐ。「藤井フィーバー」ともいえるにぎわいが起きている。

 7月2日、若手有望株の佐々木勇気五段(22)に敗れ、連勝は29でストップ。竜王戦も敗退となった。しかし、まだ年度内にタイトル戦の挑戦者になる可能性は残されている。名人戦につながる「順位戦」でも好スタートを切った。今以上のフィーバーを巻き起こす日は、そう遠くないかもしれない。(解説/朝日新聞文化くらし報道部・村瀬信也)

<藤井聡太四段の29連勝>
神谷広志八段が保持する公式戦の連勝記録28を30年ぶりに更新

1勝目 12月24日 加藤一二三九段
2勝目 1月26日 豊川孝弘七段
3勝目 2月9日 浦野真彦八段
4勝目 2月23日 浦野真彦八段
5勝目      北浜健介八段
6勝目      竹内雄悟四段
7勝目 3月1日 有森浩三七段
8勝目 3月10日 大橋貴洸四段
9勝目 3月16日 所司和晴七段
10勝目 3月23日 大橋貴洸四段
11勝目 4月4日 小林裕士七段
12勝目 4月13日 星野良生四段
13勝目 4月17日 千田翔太六段
14勝目 4月26日 平藤真吾七段
15勝目 5月1日 金井恒太六段
16勝目 5月4日 横山大樹アマ
17勝目 5月12日 西川和宏六段
18勝目 5月18日 竹内雄悟四段
19勝目 5月25日 近藤誠也五段
20勝目 6月2日 澤田真吾六段
21勝目 6月7日 都成竜馬四段
22勝目     阪口悟五段
23勝目     宮本広志五段
24勝目 6月10日 梶浦宏孝四段
25勝目      都成竜馬四段
26勝目 6月15日 瀬川晶司五段
27勝目 6月17日 藤岡隼太アマ
28勝目 6月21日 澤田真吾六段
29勝目 6月26日 増田康宏四段

※月刊ジュニアエラ 2017年8月号より

ジュニアエラ 2017年 08 月号 [雑誌]

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村瀬信也
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