中小企業は上海市内から郊外へとオフィスを移しはじめているとか…(※イメージ写真)
中小企業は上海市内から郊外へとオフィスを移しはじめているとか…(※イメージ写真)

 今年の初め、「中国による外国人就労者のランク付け」のニュースが報じられた。中国が外国人就労に対して、かなり厳しい基準を設けるというこの制度。4月から実施となっているが、実際、中国に住む外国人就労者にどんな影響を及ぼしているのか。上海在住19年、『90分でまるわかり中国』(朝日新聞出版)著者の亀田純香氏に、その実態を寄稿していただいた。

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 昨年、中国政府は突然、外国人就労者の管理を厳しくすると発表。外国人就労者をA、B、Cの3ランクに分け、ランクごとに人数を制限していくというものである。おおまかに言うと、次のような分け方となる。

 Aランク:ぜひ中国で働いてほしい人
 Bランク:働いてもよいが、多すぎれば出て行ってもらう人
 Cランク:単純労働者なので基本的には不要な人

 これだけでも中国の強硬な姿勢がわかるが、問題は現時点ですでに中国で働いている経験豊富な外国人でさえも、そのほとんどがCランクに割り振られるほどに基準が厳しいことだ。

 ランク分けはポイントの加算制となっていて「世界500位以内(フォーチュン500強※注)の企業で働いた経験があると5点」「世界ランキング100位以内の大学卒業だと5点」「博士であれば20点、学士は10点」というようにそのポイントが決まっている。

 例えば、東証2部の準大手メーカーの派遣者で、中国勤務が初めて、早大卒、55歳、中国語は基本会話程度でHSK(中国政府認定の中国語検定資格)は取得なし、中国で申告している年収は30万元、上海勤務の場合だと、ポイントは40点前後でCランクに分けられてしまう。さらに駐在10年、経験豊富、中国への愛情も深いというような人でも、基準を満たせずCと評価されるというようなことは珍しくない。

 家賃の高騰で住居も会社もコストが上がっているなかでの、この就労者のポイント制。一方的に点数で割り振られて「優/可/不可」と分けられてしまう側は、たまったものではない。がんばってきた就労者ほど、中国に見切りをつけて帰ろうかと悩んでいる。実際、私のまわりでも「出張ベースで必要なときだけビジネスホテル住まいのほうがよほど気楽」とぼやく会社の管理職もいる。

「ランクづけもそうだけど、だんだん外国人が働きにくくなった」と語るのはBさん。上海在住10年のベテランだ。家賃の高騰は住宅だけではなくオフィスにも影響していて、中小企業は上海市内から郊外へとオフィスを移しはじめている。通勤時間を短縮するため、郊外に住まいも移す駐在員も多くなり、市内と比べ、生活の不便さでストレスをかかえるケースも少なくない。

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