目に見えない微生物(菌)がつくりだす食べ物を知っているかな? おいしくて体にもいい「発酵食」を科学的に学んでみよう。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、東京農業大学名誉教授・小泉武夫さんの解説を紹介する。

「ホンオ・フェ」(韓国)/韓国で伝統的に食べられてきた郷土料理。巨大なエイをかめの中に何匹も詰めて、重石をして空気を抜き、10日ほど熟成・発酵させたもの。エイがもともと持つアンモニア臭がさらに増し、噛むと涙が出るほどの強烈なくささに!
「ホンオ・フェ」(韓国)/韓国で伝統的に食べられてきた郷土料理。巨大なエイをかめの中に何匹も詰めて、重石をして空気を抜き、10日ほど熟成・発酵させたもの。エイがもともと持つアンモニア臭がさらに増し、噛むと涙が出るほどの強烈なくささに!

■発酵食の始まりは偶然の発見

 世界の発酵食のなかには、日本のくさやを筆頭に、韓国のホンオ・フェ、スウェーデンのシュール・ストレミング、中国の臭豆腐(しゅうどうふ)など、非常にくさいものもある。ある国の人にはとてもおいしい発酵食でも、別の地域の人からすると「あんなものは食べられない!」ということがあるから、おもしろい。

 以前、母校の小学校を訪ね、子どもたちに”くさい体験授業”を行った。私は、世界一くさい「シュール・ストレミング」と、猛烈にくさい腐ったサバを持参し、両方のにおいを嗅がせたところ、子どもたちは「くさい、くさい」と大騒ぎ!

 そこで「どちらかを必ず食べなければいけないとしたら、どっちを選ぶ?」と究極の問いかけをしたら、全員がシュール・ストレミングを選んだ。人間はきっと生まれながらに、自分にとって安全か危険かをにおいで嗅ぎ分ける力を持っている。これは人間に備わった本能なのかもしれないね。

 ところで、世界の発酵食はいつごろから食べられていたのだろう? パンの例を見てみよう。今から6千年ほど前のメソポタミア(現在のイラクあたり)では、小麦と水を混ぜて焼く、平べったいパンを食べていて、これが古代エジプトに伝わった。あるときパンをつくる人が生地を暖かい場所に放置していたら、空気中の酵母が入って膨らんだ。焼いてみると、無発酵のパンよりやわらかくて食べやすい。この発酵パンがその後、ヨーロッパに広まっていったと考えられている。

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AERA dot.編集部
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