さらに、その1カ月後のスケートカナダでは、SPの後半はオータムクラシックと同じように盛り返しながらも、最初の4回転ループがダウングレードで膝をつき、続く4回転サルコウが3回転になってセカンドジャンプを付けられないというミスが響き、79.65点で4位発進という結果に。そしてフリーでも最初の4回転ループがダウングレードになって転倒し、後半最初の4回転サルコウからの連続ジャンプも2回転+3回転になるミス。フリー1位の183.41点を獲得したが、合計ではSP1位のパトリック・チャン(カナダ)に3.89点届かない263.06点で2位という、消化不良の結果に終わった。

 だが、それでも羽生の表情が穏やかだったのは、昨シーズンのような迷いはなかったからだ。今挑戦しているものは自分が納得してのもの。その完成度がまだまだだというだけだと、自分自身の中では割り切れていたからだ。

 だからこそ、昨シーズンにスケートカナダの悔しさから攻めに転じてNHK杯で素晴らしい演技を見せてくれたように、「今シーズンも」という期待は大きい。それをどんな形で11月25日からのNHK杯で見せてくれるか。

 最初のオータムクラシックのフリーが終わったあと、羽生はこう話していた。

「日本でやっているジャパンオープンでは宇野(昌磨)選手が198点を取っているし、ハビエル(・フェルナンデス)も素晴らしい演技をしていたので自分がこういう演技をしたことをすごく不甲斐ないなと感じています。でもその不甲斐なさはマイナスとは思えなく、終わってからずっとニヤケが止まらないので。早く練習をして、次に出たときにはひと皮とはいわず、10も20も剥けて『こういう羽生結弦を待っていた』と言われるような演技が出来るように、すごく楽しみながら練習をしていきます」

 そんな強気な発言のような姿にどこまで迫れるか。NHK杯での羽生への注目点は、その一点に集約されるだろう。(文・折山淑美)