たとえば、出場者のひとりdotさんの作った「みすずロボ2号」は「大会当日に完成した」というまさに急ごしらえのロボット。dotさんによると「とりあえず動けばいいかなという気持ち」でリングに上がったという。

 それに対するのはシンガポールからやってきたDin Chanさん。シンガポールということで、マーライオンをモチーフにしたロボット「サイボーグライオン」を持参したが、リングに置かれたのはどう見てもただのライオンのぬいぐるみの首。さらに「マーライオンなので口から水が出るようにしたかったんですが、それは難しすぎたので代わりに棒を刺すことにしました」と、その場で棒を刺し始めた。ロボット自体がヘボいのはもちろんだが、出場者のモチベーションもさほど高くはないのだ。

 気になる試合の方は、ゴングが鳴るや否やみすずロボ2号が暴走、相手に接触することなく自ら場外へ。一方サイボーグライオンの方は、その場でかわいらしくぷるぷると震えるのみであった。この展開に客席からは拍手と笑いが起こる。

 結局、この試合はより多く移動したということでみすずロボ2号の勝利。戦ったともいえないような試合だったが、ヘボコンの試合はこういった形で決着がつくことが多い。

 また、会場を大きくわかせた戦いのひとつが、hoshitoshi115さんの作った「巨神兵」対アニポールきょうこさんの作った「ポールダンスロボ パーティーロックアンセム」の試合だ。巨神兵の方は名前の割にはかなり小さく、さらにどう見てもその名とは無関係な、ジョッキーが乗った競走馬の形をしたロボット。hoshitoshi115さんによると、「ジョッキーのお尻がかわいいのがポイント」とのことだ。

 対するパーティーロックアンセムの方は、アニポールさんが「とにかくゴキゲンさ、パーティー感を大事にしたロボットです」と話すように、かなりはしゃいだビジュアルのマシンだ。輝く機体の上にはポールダンスをするバービー人形の姿が。マシン上にはブルートゥーススピーカーが載せてあり、そこからEDM系の音楽が流れる。さらに、役に立つのかは不明だが「ボタンを押すとマシンの箱から子ども銀行のお金が飛び出す」システムも組み込まれているという。

 試合のゴングが鳴ると、パーティーロックアンセムのポールダンス人形が勢いよくぐるぐる回りだす。これが相手に当たればかなりの威力を発揮しそうだが、高さをみると相手には当たりそうにない。一方で巨神兵の方は、開始直後に何かミサイルのようなものを発射……したように見えたのだが、それはジョッキーの首だった。どうやら攻撃ではなく、その場でなぜかマシンが大破したようだ。しかしながら、首がもげた巨神兵はまっすぐに相手に向かっていき、相撲のように相手をぐいぐい押していく。場外の間際にまで押されたパーティーロックアンセムは、操作ミスでこのタイミングで子ども銀行のお札を吐き出す。しかし特に意味はなくそのまま場外へ。巨神兵の勝利となった。

 このように、意味の分からないところでのマシンの大破や、操作ミスといったことが試合では頻繁に起こる。そしてそんなアクシデントを見るたびに、観客は大いに盛り上がっていた。

 2回戦は4体が同時に戦うバトルロワイヤル形式をとるが、それによってより試合はより混迷を極めた。疲弊したマシンがバトルとは無関係に大破したり、チーム内の連携がとれていなかったりと、とにかく予想外の展開が続いた。

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