また、多忙な三浦さんは、なかなかトレーニングの時間が取れないため、日々の生活で両足首に重りをつけ、ザックを背負って移動するそうだ。70歳を過ぎてからのエベレスト登頂前には、なんと片足に5~10キロずつ、背中に20~30キロのザックを背負ったという。「1日1時間歩く、バランスの良い食事を取る、というのが『守りの健康』だとしたら、僕の場合は『攻めの健康』だね」と語るが、こういうことを思いつく時点で普通の人ではない。

 途中、標高877メートル地点で記念植樹をして、さらに頂上を目指す。ひたすら広いゲレンデを登るため、木にぶつかったり、転んだりする危険は少ないが、ガスで視界が悪く先が見えない。頂上が近づくにつれ、疲れがたまってきたのか、三浦さんの表情も少し険しくなった。

 登り始めてから約1時間半、約2.7キロの道のりを経て、三浦さんが頂上に到達。先に着いていた参加者から、拍手が送られた。ベンチに腰を下ろした三浦さんの表情が和む。さっそく写真撮影を求められ、快く応じる。小さな子どもには優しく「頑張ったね」と声を掛けていた。

 三浦さんは「登るのがこんなに疲れるとは思わなかった」と苦笑しつつも、「つらい、苦しい登りでも、頂上に着くと達成感を感じる。それがあるから何回も登ってしまうんでしょうね」としみじみと語った。登りながら懐かしくなり、「コースがゆったり広くなっていていいスキー場になった」と感じたという。「また冬に来て久しぶりに滑ってみようかな」との発言も飛び出した。

 三浦さんの次の目標は、2018年、85歳でヒマラヤのチョ・オユー(標高8201メートル)の頂上からスキー滑降することだ。世界的な挑戦は、いつも「なんとなく思いついて」始めるという。エベレスト登頂についても、「90歳まで生きていたら、もう1回やってみようかな」とひょうひょうと語る。

 ハチ北高原自然協会によると、今回、三浦さんと登ったルートは、夏季はいつでも開放しているという。スキーも良いが、三浦さんの挑戦に思いをはせながら、自分の足で登ってみるのも良さそうだ。

(ライター・南文枝)