「部品は極力少なくしないと、サザエのサイズの基盤に収まらないんです」

 設計士と相談のうえ、極力部品を減らすように努めた。その一方で、中央部分のスピーカーに関しては、小さいサイズだったものをあえて大きくしたという。ある程度の大きさのスピーカーにしないと、いい音で聞くことができないと考えたからだった。加えて日本製スピーカー採用することで、より質の高い音を追求。そのこだわりはさすがはラジオ局といったところだろう。

 そうして出来上がった基盤をひとつひとつ、サザエの貝殻にはめ込んでいくのも吉田さんの仕事だった。

「基盤の接着にはエポキシ粘土というものを使ったんですが、これがすごく固まりやすいんです。基盤の位置を『ここ』と目測をつけたら、すぐにはめなければいけない。なかなかシビアな作業でした」(吉田さん)

 こうしたふたりの地道な作業によって生まれたのがSAZAE RADIOだった。

 実物は片手で掴めるほどのサイズで、遠目にみるとサザエそのもの。貝殻はゴツゴツしているが、白く磨かれているのでインテリアにもマッチしそうだ。スイッチを入れると、オートチューニングですぐに番組を聞くことができ、もちろんベイエフエム以外の番組も視聴可能だ。アンテナ線がついているので、wifi設定などは不要。SAZAE RADIO単体でラジオを楽しめ、充電式なので持ち運びもできる。音量は幅広く調節できるので、大音量にしてみんなで楽しむのはもちろん、音量をしぼって耳にあてる、なんていう、絵になる聞き方をするのもいいかもしれない。

 SAZAE RADIOは1個3980円(税込み)。4月1日からベイエフエム「SAZAE RADIO」特設サイトで限定100個を販売するが、応募者多数の場合は抽選になる。

 ちなみに、ほぼ2人で100個を製作したというこの商品、昨年の秋頃から、およそ半年間かけて、今回の販売にこぎつけたという。しかし、他の社員が手伝えば、もう少し早くたくさんできたのでは……?

「弊社は社員も少ないので……貝殻を集める際などに他の社員が手伝うこともあったんですが、本業はやはりラジオの放送なので。今回はほとんどの作業をふたりで行いました」(広報担当)

 ちなみに小縣さんと吉田さんも「本業」の合間合間に少しずつ作業を行ったという。吉田さんは、SAZAE RADIOについて「ラジオ局が本気で作ったラジオです」と話していたが、まさにその通りの、ふたりのラジオ愛がつまった商品といえそうだ。(ライター・横田 泉)