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悪徳業者が横行! プロが教える“失敗しない”介護リフォーム

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国民生活センターの相談件数推移

国民生活センターの相談件数推移

玄関前の階段階段と手すりを施工。景観を損なうことなくすっきりと片付いて移動に支障がなくなった。(写真提供:いずれも湘南改造家)

玄関前の階段
階段と手すりを施工。景観を損なうことなくすっきりと片付いて移動に支障がなくなった。(写真提供:いずれも湘南改造家)

玄関の手すり「手すりありき」の工事では必要な場所や数の過不足が起こりうる。本人の身体状態やスペースの広さなどさまざまな要素を踏まえておこなう

玄関の手すり
「手すりありき」の工事では必要な場所や数の過不足が起こりうる。本人の身体状態やスペースの広さなどさまざまな要素を踏まえておこなう

トイレの引き戸トイレの開き戸は、利用者の姿勢が不安定になりやすいことから、天井から吊り下げるタイプの引き戸に取り換えた

トイレの引き戸
トイレの開き戸は、利用者の姿勢が不安定になりやすいことから、天井から吊り下げるタイプの引き戸に取り換えた

「国民生活センター」によると、60歳以上の認知症等高齢者にかかわる相談のうち、住宅リフォーム工事に関する相談数が第3位を占める。同センターの担当者はこう注意を促す。

「認知症の高齢者を狙った訪問販売のトラブルが絶えません。健康な人でも、ひとり暮らしで孤独だと、身の上話を聞いてくれるフリをされ、すっかり信用してしまうことも少なくありません」

 消費者被害等に詳しい八坂玄功弁護士は、「悪徳な業者から被害を防ぐ制度がない」と指摘する。

 介護保険には要支援・要介護の高齢者が住宅改修をおこなった際の費用の9割を負担する制度(15年8月からは一定所得がある人は8割)があるが、「どの業者を選べばよい」という明確な基準がない。じつはこれまでも介護保険を使った住宅改修の「質」を懸念する声は少なくなかった。

 15年3月、住宅改修に関する驚くべき実態が報告された。厚生労働省の国庫補助による住宅改修に関する実態調査「介護保険における住宅改修研修のあり方に関する調査研究」報告がそれだ。

 調査は三つの地域の保険者から要支援1から要介護5まで合計203件を選び出して全体的な傾向を分析。さらに、(1)排泄・入浴・外出行為の問題あり・なし、(2)要介護度、(3)地域から均等に59件ピックアップし、「理由書」(後述)「写真」「見積書」と改修の内容を精査し、ケアマネジャー、理学療法士、1級建築士が評価した。

 すると「住宅改修をおこなうことの効果が大いに期待でき、なおかつ必要性・需要性から目的と改修する箇所が合致している」と評価されたものは、わずか2件にとどまった。つまり介護保険による住宅改修が抱える「質」の課題が浮き彫りになった。

 なぜ、こうしたずさんな工事がおこなわれるのか。あるリフォーム業者はこう話す。

「多くの事業者に介護の専門的な知識があるわけじゃない。客から手すりをつけてくれと頼まれると何も考えずにつけてしまう」

 コストの問題もある。一般的に改修工事は新築と違って事業者の収益性は高くないといわれている。別の業者はこう言う。

「職人の人件費はそれなりになる。室内の移動だけでみれば手すりじゃなく歩行器を買えば済むこともあるが、それでは事業者のもうけにはつながらない」

 介護保険制度においては在宅の要介護者が、

(1)手すりの取り付け
(2)段差の解消
(3)滑り防止および移動の円滑化などのために床または通路面の材料の変更
(4)引き戸などへの扉の取り換え
(5)洋式便器などへの便器の取り換え
(6)その他、(1)~(5)に付帯する改修

 以上6種類の住宅改修をおこなった場合、居宅介護住宅改修費として同一人・同一家屋につき20万円を限度に支給される。介護保険の限度額内だけでまかなおうとすれば、手抜き、デタラメ工事がおこなわれてもおかしくない。

 また、介護保険で住宅改修を利用しようという場合、利用者はあらかじめ市区町村に申請書を提出しなければならない。その際必要なのが、ケアマネジャーなどが作成する「理由書」だ。ケアプランを作成するケアマネジャーが「理由書」を書くことで、利用者のよりよい介護へとつながるのだが、建築や施工についての知識を持ち合わせていないケアマネジャーでは適切な指導ができない可能性がある。取材の中では、多忙で十分な話し合いもなく理由書を提出したと話すケアマネジャーもいた。

(取材・文/倉西隆男)

※週刊朝日MOOK「自宅で看取るいいお医者さん」より抜粋


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