これに対し、2006年、ルイ・ロデレールのマネージングディレクターがエコノミスト誌のインタビューで「こうした現状は不本意である」「ドンペリやクリュッグは彼らが買うことを喜ぶだろう」と発言し、物議を醸しました。この発言は人種差別として話題となり、アメリカではクリスタル不買運動が起こったほどです。

 特にクリスタルを気に入っていたラッパーのジェイZの呼びかけで、ヒップホップ業界からは一切姿を消し、以来、クリスタルに変わりアルマンドブリニャックを目にするようになりました。

渡辺順子(わたなべ・じゅんこ)
プレミアムワイン代表取締役。1990年代に渡米。1本のプレミアムワインとの出合いをきっかけに、ワインの世界に足を踏み入れる。フランスへのワイン留学を経て、2001年から大手オークションハウス「クリスティーズ」のワイン部門に入社。NYのクリスティーズで、アジア人初のワインスペシャリストとして活躍。2009年に同社を退社。現在は帰国し、プレミアムワイン株式会社の代表として、欧米のワインオークション文化を日本に広める傍ら、アジア地域における富裕層や弁護士向けのワインセミナーも開催している。2016年には、ニューヨーク、香港を拠点とする老舗のワインオークションハウス Zachys(ザッキーズ)の日本代表に就任。日本国内でのワインサテライトオークション開催を手がけ、ワインオークションへの出品・入札および高級ワインに関するコンサルティングサービスを行う。著書に『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』『高いワイン』(共にダイヤモンド社)がある。