徹夜は戦略的に乗り切ろう
徹夜は戦略的に乗り切ろう

 睡眠の悩みを解消するための情報は、これまでにも、さまざまなメディアでたくさん紹介されてきました。でも……。

・8時間眠りなさい
・できれば「22時」に眠りなさい
・規則正しく栄養管理の行き届いた食事を摂りなさい
・睡眠時間を確保することから1日をスケジューリングしなさい

「……いやいや、そんなの無理だから!」

 そう思ったことはありませんか?

 いわゆる「睡眠の常識」と、ビジネスパーソンの実態はかけ離れているのです。そこで本連載では、医師とビジネスパーソン両方の視点と経験を併せ持つ著者が、新刊『一流の睡眠』から、現実的かつ具体的な「睡眠問題解決法」を教えます。

 今回は、「どうしても徹夜」な時、翌日のダメージを最小に抑える方法をお伝えします。深夜のオリンピック観戦にも応用してみてください。

●一流のビジネスパーソンは徹夜の「医学的悪影響」を知っている

 先日、ある企業を訪問したところ、栄養ドリンクの空箱が置かれていました。社員さんに「箱買いですか?」と聞いたところ、「部署でまとめて購入し冷蔵庫にストックしています」とのこと。

 さらに「実際に飲んでいますか?」と聞けば、「徹夜明けはだいたい飲んでますね」との返答。徹夜が常態化して、翌日も体にムチ打つようにして頑張る職場なのだと思いました。

 睡眠を軽視している会社やビジネスパーソンがまだまだ多いことに驚きます。医師として、これは絶対に看過できないことです。結論からお伝えすれば、徹夜は最悪です。

 徹夜がもたらす睡眠不足は、眠気や全身の倦怠感、頭重感、不安、イライラなど身体的・精神的に悪影響を及ぼします。また、血圧や血糖や中性脂肪の値を上昇させ、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を悪化させたり、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高めることが明らかになっています。

 さらに、免疫力を低下させ、インフルエンザなどの感染症、がんの誘因になることも示されています。また、満腹感を促し食欲を抑えるホルモン「レプチン」を減少させる一方で、空腹感を感じ食欲を促進する「グレリン」を増加させるため、肥満を引き起こすことも知られています。

 そして、睡眠不足はうつ病やパニック障害とも関係しています。そんな状態で不眠状態が続けば、自殺の危険性も高まります。徹夜続きは、文字通り、医学的には「百害あって一利なし」の行動なのです。

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