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第32回 最近気になる2人

文・鈴木正晴

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「おだしプロジェクト」のトキヤマさん

「おだしプロジェクト」のトキヤマさん

このときは「鰹(かつお)節」のジャンパーを着て講演していました

このときは「鰹(かつお)節」のジャンパーを着て講演していました

奈良で漆師をされているサカモトさん

奈良で漆師をされているサカモトさん

カラフルな漆器を作っています

カラフルな漆器を作っています

 最近気になってしょうがない人が2人います。

 一人は「おだしプロジェクト」のトキヤマさん。和食を支えるおだしを、日本人としてもう一度見直して、食の大切さを見つめ直す。それが、食されるものの命や食べることで生かされる命への感謝につながり、思いやりにつながる、と熱く語るトキヤマさん。すごく破壊力があるというか、突破力のある方で、少しお話ししただけですぐファンになってしまいました。

 トキヤマさんは、「だしを広めたいので、スズキさん、お店少し使わせて!」と言って、不定期に日本百貨店しょくひんかんまでいらっしゃいます。お客様の前でかつお節を削り、だしをとり、おみそ汁をふるまって、だしの素晴らしさを伝えています。ぜひ一度トキヤマさんに会いにいらしてください。

 もう一人は、奈良の漆師のサカモトさん。

 サカモトさんは、会ってまだ間がないのですが、どうにも気になっています。まずは奈良県であること。奈良の知り合いがほとんどいなかったので、「奈良で漆をやってます」と言われた瞬間に、「きたっ!奈良ダッ!」と思いました。僕より少し年下ですが、年代も近い。そして何よりも熱いオトコです。いいものを作って、それを発信してやろうというギラギラ感がイイ!

 イイモノを作っても自己満足で終わったり、自身の考えを曲げてでもマーケットに迎合して好きなモノではなく売れるモノを作ったりすることも少なくない中、「イイものはイイ、漆器はイイ!」と言い切る姿に、初心に帰らされる気がしました。

 元々サカモトさんのご実家は指物師。木工は、さしもの、ひきもの、まげもの、くりもの、と分かれていて、指物(さしもの)とは、板を差し合わせてタンスや机などをつくる分野です。代々お寺さんに桐(キリ)の箱を納めていたのですが、商品の最終仕上げである漆塗りの加工は、京都の業者さんに委託することが多かったそうです。漆塗りを自分で出来れば全部自分のところで完結するじゃない、と思ったサカモトさんは、27歳で東京・目白の蒔絵(まきえ)師に弟子入りをします。漆の勉強をしている中で、「なんでこんなにいいものを若い人たちが使わないんだろう。使わせてやる!」と考えて作ったのが、今回ご紹介するUrushi no Irodoriシリーズです。

 漆器というと、繊細で丁寧に扱わなければならないイメージがあるのですが、実は正反対で、水・熱・酸・アルカリへの耐性があり、抗菌効果も確認されています。昔の人も何かの補強に漆塗りをしていたわけですもんね。キズが付きやすく、食洗機や電子レンジで使えないことから、弱いというイメージがついたのだと思いますが、電子レンジで使えないのは「漆」が弱いのではなく、ベースが木だからだそうです。漆器は、きちんとした使い方とお手入れさえすれば、昔の人たちのように日常生活でガシガシ使えます。ただし、使いたいデザイン漆器が無いよね、と考えたサカモトさん。色とりどりの楽しい器を作りました。

 次に考えているのはカレー皿だそうです。漆器でカレーを食べる。なんだか特別な時間になりそうです。

 熱い男、サカモトさんは、今日も工房であーじゃこーじゃと、漆器を広める作戦を考えているはず。気になるなあ。


(更新 2016/1/27 )


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プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)

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