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第24回 うつくしく奥深い日本語

文・鈴木正晴

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クニヒロさんのピアス。よく見ると「うつくしい」というひらがなです

クニヒロさんのピアス。よく見ると「うつくしい」というひらがなです

ワタオカさんの爪ヤスリ。ヤスリの質はもちろん、削りやすいサイズや角度にもこだわっています

ワタオカさんの爪ヤスリ。ヤスリの質はもちろん、削りやすいサイズや角度にもこだわっています

かかと用も販売しています

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ヤスリ面は小さな刃の集合体。爪ヤスリは、細やかに三方向から目を立てているため、爪断面の細胞を崩すことなく、これ1本でなめらかな仕上げられます

ヤスリ面は小さな刃の集合体。爪ヤスリは、細やかに三方向から目を立てているため、爪断面の細胞を崩すことなく、これ1本でなめらかな仕上げられます

 日本の言葉、特にひらがなや漢字の美しさ、奥深さを、さまざまな出会いの中で感じることがあります。

 先日知り合った、「ひらがな」というブランドを展開しているクニヒロさん。まだお若い書家さんで、一つひとつ言葉を探しながらお話しされる姿に、とても言葉を大切にされる方だなと感じたのですが、耳元には妙なアクセサリーが。よく見ると「うつくしい」というひらがなではないですか。

 形もうつくしく、意味もそのままうつくしい。目でもめでられる、日本語の素晴らしさを感じられる逸品です。海外のヒトにも、その美しいフォルムに興味をもってもらえるのではないでしょうか。

 そして漢字。漢字は成り立ちを考えると楽しいですね。

 広島で業務用のヤスリを作っているワタオカさんが、娘さんの発案で爪用とかかと用のヤスリを作ったと聞き、見に行ってきました。一番びっくりしたのは「ヤスリ」の漢字です。「鑢」と書きます。カネヘンに思慮の慮。この意味、何だろうな。金属だからカネヘンなのだろうけど、なぜその隣が思慮の慮なんだろう? 商談中もそれが頭を離れず、ほとんど何の話をしたか覚えていません。

 帰りの車中、いただいた爪ヤスリを使ってみました。

 シャコシャコ、シャコシャコ。最初何となく引っかかるのが、だんだんと滑らかになっていく快感。シャコシャコ、シャコシャコ。運転はお任せして、ずーっと爪を磨いていました。

 磨いている間、いろんなことを考えました。

「日本百貨店どうしていこうかな。ワタオカさんのヤスリ売れるのかな。どうやってこの良さ伝えていこう。実際使ってみてもらわないとダメかな。この値段だもんな。安くないもんな。今日の夜、何食おうかな。俺の人生大丈夫かな……」

 はたからは、一心不乱に爪を磨いているように見えたかもしれませんが、単純な作業だけに、いろんなことが頭の中をめぐるめぐる。

 ああっ!!!これが「慮」の意味か!

 実際はどうなんでしょう。違うかもしれませんね。ですが、僕は「使ってるときいろいろ考えちゃうからこういう漢字なんだよ」と皆に説明しています。

 最初はどんな思いでこの漢字を作ったのか。そんなことを想像するだけでも、楽しい時間が過ごせます。日本語ってホントに繊細で奥深い。ワタオカさんのヤスリでシャコシャコしながら、ぜひ身近な漢字について考えてみて下さい。自分なりの回答が生まれればそれでいいと思います。本当の本当のところは誰にもわからないんですから。


(更新 2015/9/24 )


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プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)

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