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第23回 心にしみたオッサンの一言

文・鈴木正晴

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高知と言えば!ミレービスケット!!これも旅の中で見つけました

高知と言えば!ミレービスケット!!これも旅の中で見つけました

エイイチさん

エイイチさん

 日本全国の作り手の方々に出会いに、方々渡り歩く毎日。月の半分は東京にいません。

 日本百貨店の1店舗目は2010年12月、東京・御徒町の2k540という、モノヅクリの街の中に作りました。そのお店の準備の時は、日本のいいものを集めたお店を作ろう!という発想だけが先行して、何をどうやって仕入れればいいのか全くわかりませんでした。もともと小売りの商売をしていたわけでもないので、すべてが手探り。不用意に職人さんを訪ねていって怒鳴られたこともありました。誰かが何かを紹介してくれると聞けば駆けつける。おいしいものを食べたら、裏の生産者表示を見て電話して会いに行く。道の駅に行けば隅から隅まで眺めて買えるだけ買って、駐車場の車の中で試食する。コネもお金もないので、地道にツナガリをつくってきました。

 一つひとつ、完全オーダーメイドのツナガリ。日本百貨店が一番大切にしていることです。

 こんな風にいろいろな地域を訪ねていると、「日本語」を意識することが多くあります。たとえば地名。どうして千葉と高知で、同じ地名がたくさんあるのかな、なんてその土地の歴史に思いをはせたり、何の気なしに地元の方が使っている方言が、胸に刺さったり、気持ちをほっとさせてくれたりします。

 初めて高知に行った時の話。ちょっと僕、珍しく落ち込んでいたのですが、その日に知り合ったヒトが、飲みながらバンバンと僕の背中をたたいて、「マサハル、なんちゃないきに!!!」と声をかけてくれました。

 なんちゃないきに。素晴らしい言葉です。今でも何か気重なことがあると、「なんちゃないきに」とつぶやきながら頑張っています。

 それから何年も経つのですが、その言葉を発してくれたエイイチさんとは、いまだに兄弟づきあいをしています。地元の親分みたいなオッサンで、高知の夜の街を歩くと、若い子たちがあちこらから「エイイチさん、オス!」「エイイチさん、オス!」とあいさつしていきます。普通なら付き合えないこんなオッサンとも、一つの言葉を通して一生の付き合いが生まれました。

 大体何があってもなんちゃないきに、なんちゃないきにと言ってくれるエイイチさんですが、さすがに一度だけ、エイイチさんに借りた車で、出発3秒後に駐車場の縁石に乗り上げ、全く車が動かなくなってしまった時だけは無言でした。その節は失礼いたしました。


(更新 2015/9/ 9 )


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プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)

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