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染五郎さんが舞台に帰ってきた

文・中島かずき

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 日生劇場の二月大歌舞伎を観に行ってきました。
 ケガで休んでいた市川染五郎さんの復帰公演です。
 日生劇場で染五郎さんと言えば、2004年の『髑髏城の七人ーアオドクロー』がこの劇場でした。
 台風に襲われて交通機関がストップしてしまい、カーテンコールで染五郎さんが動いている鉄道を知らせるというハプニングがあったり(しかも二回も)、当時まだ高校生だった鈴木杏さんも出演していて、楽屋で宿題をやっていたのが印象的でした。
 それからもう10年近くになろうというのですね。月日の経つのは早いものです。

 市川染五郎さんには、過去五回、新感線に出演してもらっています。
 2000年の『阿修羅城の瞳』を皮切りに、『アテルイ』、『阿修羅城』の再演、『髑髏城の七人ーアオドクロー』、『朧の森に棲む鬼』。僕は直接関わってはいませんが、『阿修羅城の瞳』は染五郎さん、宮沢りえさん出演、滝田洋二郎さんの監督で映画にもなっています。
 新感線が今のような規模の公演がうてるようになったきっかけは、2000年の『阿修羅城の瞳』の成功に負う所が大きいですし、染五郎さんご自身が芝居にしたいと暖めていた題材だった『アテルイ』で、僕が岸田戯曲賞を受賞することになりました。
 新感線とは深い関わりのある方です。

 その染五郎さんが、公演中に奈落から落ちて重傷を負ったという知らせを聞いた時には、驚きました。かなり高い奈落だったと聞きましたし、命に関わるケガになりはしないかと本当に心配しました。
 手首の骨折ですんだという報道もあり、ケガの治りも順調だと聞いてはいましたが、舞台に立つ染五郎さんを見て、やっと本当に安心できた気がします。
 河竹黙阿弥の『新皿屋舗月雨暈』で、酒に酔って愛妾を手打ちにする殿様を好演していました。こういう弱い人間や悪い人間を演じると、染五郎さんは色気があるんです。復帰公演で、達者な姿が見られて、ホッとしました。
 楽屋に挨拶に行くと「今まで出来たことは全部出来ます」と力強く言ってくれました。
 頭を打ったり、骨折したりした後遺症を心配していたのですが、幸いそういうものはなさそうです。

 歌舞伎界では新しい歌舞伎座のこけら落としを前に思わぬ訃報が相次いだりして、暗いニュースが多かったですよね。その中で、染五郎さんの復帰は、本当に嬉しい出来事です。彼自身、復帰の会見や今回のパンフレットでも「生かされた」という言葉を使っていますが、先に逝かれた先輩方の思いを受けて、ますます精進なさることでしょう。

 これからしばらくは本業の歌舞伎に専念なさると思いますが、折を見て、また一緒に芝居が作れたらいいなと思います。


(更新 2013/2/14 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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