ソフトバンク・工藤監督 (c)朝日新聞社
ソフトバンク・工藤監督 (c)朝日新聞社

 昨シーズン、圧倒的な強さで日本一に輝いたソフトバンク。今年も開幕前の順位予想では大半の評論家から支持を集めており、連覇が有力視されていた。しかし開幕から1カ月を過ぎた4月末時点で勝率5割はキープしているものの、セットアッパーの岩嵜翔、絶対的な守護神のサファテが故障でともに長期離脱となり、苦しい戦いが続いている。そして現在の戦力を見てみると、サファテの不在以外にも問題は少なくないことがよく分かる。そこで今回はソフトバンクの抱える不安要素を洗い出してみたいと思う。

 まず気になるのが将来のエース、中軸候補としてドラフト上位で獲得した選手が思うように伸びていないという点である。過去10年に1位、2位で指名した選手の一覧を並べてみると下記のようになった。

2008年 1位:巽真悟  2位:立岡宗一郎
2009年 1位:今宮健太 2位:川原弘之
2010年 1位:山下斐紹 2位:柳田悠岐
2011年 1位:武田翔太 2位:吉本祥二
2012年 1位:東浜巨  2位:伊藤祐介
2013年 1位:加治屋蓮 2位:森唯斗
2014年 1位:松本裕樹 2位:栗原陵矢
2015年 1位:高橋純平 2位:小沢怜史
2016年 1位:田中正義 2位:古谷優人
2017年 1位:吉住晴斗 2位:高橋礼

 投手では武田、東浜、森が戦力となり、野手では今宮と柳田が中心選手となっているが、全く一軍の戦力になっていない選手も少なくない。巽、立岡、山下、吉本は既に球団を去り、川原と伊藤は育成選手に降格。その年の目玉として抽選で引き当てた高橋と田中も故障に苦しんでいる。更に言うと下位指名でも戦力になっている選手は多くない。一軍の戦力となっているのは摂津正(2008年5位)、嘉弥真新也(2011年5位)、高田知季(2012年3位)、上林誠知(2013年4位)の四人だけ。一軍で1勝、1安打もマークしないまま退団、もしくは育成契約になった選手は16人を数える。

 まだまだこれから出てくる選手も当然いるだろうが、決してドラフトが成功しているとはいえないだろう。この期間の支配下での指名の失敗を補っているのが育成ドラフト出身の選手である。千賀滉大(2010年育成4位)、甲斐拓也(2010年育成6位)が日本代表クラスに成長し、牧原大成(2010年育成5位)、飯田優也(2012年育成3位)、石川柊太(2013年育成1位)も一軍の戦力となっている。特に千賀、甲斐、石川レベルの選手が育成ドラフトから輩出されたということはチームにとっても日本球界にとっても大きな財産である。しかし過去10年間に育成ドラフトで指名した選手は51人いることを考えると戦力になる割合は決して多くはない。もう一度ドラフト戦略をしっかり見直す時期に来ているのではないだろうか。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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