――西野さんの「言葉」へのこだわりを感じます。何かきっかけがあったのでしょうか。
うちの父ちゃんですね。父ちゃんは万年平社員で、そのまま定年を迎えたんですが、周りの人にすごく愛されているんですよ。年賀状をいっぱいもらっていて。
自分でも書いているんですけど、その文章がすごくいい。父ちゃんみたいな人は、この世の中にまだまだいると思ったとき、文字が集まっている人が居心地の良い世界をつくりたいなと思ったことがきっかけです。
――親思いですね。
ははは(笑)やっぱりサービスを作るときに思い浮かぶ対象はいますよね。えんとつ町のプペルだったら、挑戦する人を応援するためにつくった。レターポットに関しては、うちの父ちゃんでした。
――1年後、レターポットが取り巻く世界は見えていますか。
この間、わかりやすい例が出たんです。
レターポットの仕組みは、実際に使えばわかるんですけど、頭で理解するのは難しいんです。なので、僕は動画でよく説明をしているんですが、その説明を無名のデザイナーの女性がわかりやすいイラストにしてくれたんです。そしたら、その女性に「ありがとう」というレターがいろんな人から集まったんです。そして彼女も他の人にレターを贈り続けた。そして、彼女は、信用ポイントが溜まったタイミングで、「新しいパソコンがほしい」とクラウドファンディングをしたら一晩で集まった。
――信用がお金になった瞬間ということですね。
つまり、僕が見えている世界は、レターポットは「信用の増幅器」であるということです。彼女は、次の時代の生き方を象徴していました。お金を稼ぐのではなく、信用を稼ぐ、そして必要なときに必要な分だけ信用をお金に替えることができる。
こういった世界が2、3年続くと思うんです。
でもね、一番面白いのはその先が全く見えていないということなんです。
もし、レターを換金できるシステムにしていたら、60点くらいのサービスで終わり。だけど、ここからどうレターポットが変化していくのか、全然見えていないことが楽しみなんです。見えている60点を取りにいくより、0点、もしくは100点になるかもしれない未来を取りに行くほうが面白いんです。(文/田中将介)
【レターポット】
文字が通貨となり、レター(文字)を贈り合う、「恩送り」をコンセプトとした信用経済時代の新しいサービス。1文字5円で文字を購入し、届けたい相手に文字を贈ることができる。