部下を叱る際、こちらの言い分をまくしたててしまうと、更なる言い訳や反論を呼ぶという悪循環に陥ってしまう(※写真はイメージ)
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 部下に耳の痛いことを伝え、更には成長の立て直しも支援する手法「フィードバック」。『実践!フィードバック』著書で東京大学准教授の中原淳氏は、実際の職場でうまく機能させるために、効果的なフレーズやNGフレーズを知った上で事後のフォローが大事だという。

 鏡のように客観的に部下の問題行動を指摘する「事実通知」。それをした上で、「耳の痛いことを伝えたら、部下が黙って素直に聞いてくれた」なんていうことは、実際のフィードバックではまず起こらないと、中原氏は言う。

 多くの場合、部下は「そうは言いますけど……」と反論や言い訳を試みたり、黙り込んでしまったりするだろう。「部下には部下の、現実の捉え方、見方があるからです」(中原氏)

 だから「事実通知」の次には、「問題行動の腹落とし」のステップが必要になる。対話によって部下の考えを探りながら、それを踏まえつつ上司であるこちらのロジックや考え方を伝え、両者をすり合わせていくのだ。

 このステップで最もまずい対応は、いきなり「でもね」と相手の話の話を遮り、こちらの言い分をまくしたててしまうことだ。そんなことをすると部下もカチンときてしまい、更なる言い訳や反論を呼ぶという悪循環に陥ってしまう。望ましいフレーズは、「そうか、◯◯というふうに考えているんだね、でもね……」となる。相手のいうことをじっくり聞き、リピートしたうえで切り返すのがポイントだ。

 例えば、いつも締切に遅れる部下が「花粉症がひどくて仕事に集中できず、締切に間に合わなかった」と言い訳してきたとしよう。まずは「花粉症がひどくて集中できないんだね。それは大変だね」と、部下の発言をリピートする。こうすると部下は上司であるあなたに、「受け入れられている」という感覚をもつ。この瞬間が切り返しのチャンスだ。「でもね」と、こちらの言い分を話し始める。「病院で薬をもらってくることはできるよね?」「集中できないとわかっているなら、もう少しスケジュールに余裕を持たせたら?」などと、部下がなすべきことを伝えれば、いったん受け入れたことが効いて、聞く耳をもつ可能性は高まるだろう。「フィードバックとは、まず受け入れて、攻めることなのです」と、中原氏はアドバイスする。

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