特捜部は「籠池夫妻は詐欺をした悪者」というイメージを世間に広げることで、近畿財務局は「不当な圧力を受けた被害者」とのストーリーを作ろうとしているように思える。それによって、近畿財務局の不起訴が世の中に受け入れられやすいようにしたいということでしょう。
──しかし、国有地の値引き交渉では、安倍昭恵首相夫人付の政府職員だった谷査恵子氏も、財務省とやりとりしていたことが明らかになっています。「近畿財務局は被害者」というストーリーは成り立たないのでは?
特捜部の捜査では、特定の人物の捜査をしない「国策不捜査」もあります。本気で捜査するなら、特捜部は近畿財務局を強制捜査をしているはず。証拠隠蔽が国会で大問題になっているのに、ガサ入れをしていないのは、最初から起訴の方向で捜査する気がないからでしょう。「籠池夫妻=悪党」を世間に広め、「籠池夫妻が昭恵夫人の名前まで使って脅してきたので、不当な値引きに応じざるを得なかった」というストーリーに持ち込みたいのでしょう。
──近畿財務局を調査している会計検査院の報告書が、今月中に発表されると報道されています。森友問題は、今後どうなるのでしょうか。
会計検査院の報告書がどのようなものであれ、特捜部が「近畿財務局は被害者」というストーリーを基本的に変えることはないでしょう。
幼稚園の補助金に関しては、多くの施設で同様の問題が大なり小なりあるはずです。本来は行政指導で対応すべき問題です。特捜部が捜査を始めた経緯も、捜査のやり方も処分も不可解でなことだらけです。もともと動機が不純だからでしょう。
このまま籠池夫妻に「悪党」のイメージを広めるだけで捜査が終結してしまえば、検察は一体何のためにこの事件でしゃしゃり出たのか、という疑問を持たざるを得ない。そうなれば、特捜部が国民から批判を受けるのは避けられません。(AERA dot.編集部・西岡千史)