朝起きて、まず何をするだろうか? スマートフォンを手に取ってSNSをチェックしたり、ニュースを見たり……。現代はまさに「デジタルが当たり前になった社会」だ。そのような時代において、デジタルはビジネスにおいても大きな武器となりえる。
では、どう取り入れればいいのか。その回答の一つが今回取り上げる『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』である。同書の監訳者、早稲田大学の恩藏直人教授にマーケティング4.0で語られている“究極法則”を聞いた。
* * *
――「マーケティングは自分の仕事には関係ない」と多くのビジネスパーソンは思っていそうです。
ご指摘のように、日本では「マーケティング=営業、販売」あるいは「マーケティング=消費者調査」とイメージされることが多いようです。これだと、その職種以外のほとんどのビジネスパーソンにとって関係のないテーマに思えてしまいますよね。
でも、そうではありません。私は既に30年ほどこの領域で研究を続けていますが、マーケティングとは組織で働くあらゆる人にとって関係のある課題でありトピックであると考えています。世の中に新しい価値を生み出し、それを顧客に伝え、説得し、受け入れてもらい、顧客と良い関係を続けていく。その一連の活動がマーケティングなのです。
――あらゆる人にとって?
市場調査や営業や販売、それから「伝える」という部分で宣伝や広報といった職種に関係するのはもちろんです。企画や開発部門、お客様とダイレクトに接するコールセンターなどのカスタマーサポート部門にも、マーケティングのマインド=「顧客を中心に考える視点」が必要だと言えます。
――コールセンターのスタッフにまで、マーケティング発想が必要だと。
ええ。むしろ、お客様と相対するフロントラインですから、とても大事な顧客接点を担っていると思います。ほかにも、プロダクトのデザインやWebサイトの動線を構築する仕事も、顧客の体験を大きく左右するので、マーケティング・マインドが必要ですね。
人事や財務はさすがに関係ないだろうと思われるかもしれませんが、「顧客により良い価値を提供するための人事とは」と考えていくと、次にどんな採用や社内人事をすべきなのかが見えてきます。財務も同じです。
――経営者にとってはいわずもがなですね。
価値を創造して提供していくというマーケティングは、ビジネス活動のまさに中核であり、経営そのものともいえるでしょう。