『友達以上、不倫未満』(朝日新書)の著者、秋山謙一郎氏
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 男女の間をつなぐもの――結婚という制度、そして、セックス――これらはもはや何の意味をなさないと思わずにはいられない。

 今年4月に刊行された『友達以上、不倫未満』(朝日新書)では、既婚者同士がプラトニックな関係を保ちつつも、「もし互いの配偶者と離死別して自分たちが残っていたならば、その時は一緒になろう」と、遠い将来の淡い約束を交わす関係、〈セカンド・パートナー〉――、略して“セカパ”の実態が赤裸々に綴られている。

 発刊以来、この“セカパ”なる新たな男女交際の形態は、WEB媒体をはじめ、一般紙、経済誌、夕刊紙のほか、テレビでも特集が組まれるなど、あまたのメディアがこぞって取り上げた。もはやこれは社会現象といっても過言ではない。

 こうした動きは、今は、メディアに留まらず、演劇界にも波及している。

 今年7月、「劇団おおたけ産業」が、『セカンドパートナー』と題する新作を東京・池袋で上演した。主宰者の大竹匠氏によると、「再演を検討するほどの人気ぶり」だという。

「足を運んで下さった観客のうち、とくに40代以上の女性の方からの共感の声が多かったです。若い世代からもウケていました。僕は純情なので、最初はこういった関係がわからなかったです。でも、演じていくうちに、共感はできなくてもすこし理解できました」(前出・大竹氏)

 大竹氏によると、意外にも、舞台参加した20代の若い俳優陣の間では、「役作りには困らなかった」という。これは取りも直さず、“セカパ”という関係は、実は、わたしたちにとって意識せずとも“身近なコト”であることを示しているのかもしれない。

 実際、都市部に暮らす高学歴・高収入の既婚者男女に多いといわれる“セカパ”という関係だが、かならずしもそうとも限らないという声もある。むしろ、地方で暮らす、街の元不良少年・少女や低所得層にこそ、“セカパ”的な関係が浸透しているというのだ。

 こんな話がある。地方の街で暮らす若い頃は“やんちゃ”で評判だった不良少年がいた。彼には、実の妹のようにかわいがっている幼なじみで勉強のできる賢い女の子がいた。

 ふたりは成人し、互いにそれぞれの人生の伴侶をみつけた。不良から足を洗い、職人として生計を立て、一家の主となった元不良少年は、幼なじみである妹分の披露宴に自分の妻と幼子を伴って出席、妹分の家族として祝福する。その席上、元不良少年は、妹分の夫にこう言った。

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