消費増税論議が過熱するなか、財務省関連本が次々と発売された。なかでも、みんなの党の江田憲司幹事長や、元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大教授、福岡政行・白鴎大教授の著書は、財務省を厳しく糾弾する。

 財務省は財源を隠し、国の借金額を大きく見せ、「増税しないと国がつぶれる」と政治家やマスコミを使って国民をマインドコントロールし、消費増税で省益の拡大を目指している――というのが基本的な主張だ。

 しかし、当の財務省の現役官僚やOBたちは「財務省支配」などありえない、と涼しい顔だ。

「どうもこうも、こういう本は読まない。またバカなこと書いてるな、という感じだよ」

 最近出版された主な関連本5冊について、財務官僚やOBたちによる評価、コメントをもらった。格付けについては3つ星が満点だ。

 星がひとつもつかなかったのは、『財務省のマインドコントロール』(江田憲司著、幻冬舎)、『財務省解体論』(福岡政行著、角川書店)、『財務省が隠す650兆円の国民資産』(高橋洋一著、講談社)。

 一つ星は『財務省』(榊原英資著、新潮新書)。1999年に退省した小畑績・慶応ビジネススクール准教授は「事実しか書かれていないため、エンタメとしてはつまらない。しかし、財務省の真実を知るには唯一無二の本。真実は小説よりも奇なり」と評価している。

 唯一満点の三つ星となったのは、『財務省支配の裏側』(中野雅至著、朝日新書)。前出の小畑准教授は「解釈は強引なところもあるが、おおむね事実と言っていい」と評す。また、東京税関長や財務省財務総合政策研究所長を歴任し、06年に退省した森信茂樹・中央大法科大学院教授は「『政治の空白こそが財務省パワーアップの原因』『問われるべきは政治のマネジメント能力の低下』と冷静に分析した本で、好感が持てる」としている。

※週刊朝日 2012年8月17・24日号