現在、大花壇に植えられている球根の種類は、遅咲きが63%で、4月中旬に咲く中生(なかて)は21%、早咲きは16%の配分である。近年は暖冬が続いているので遅咲きが多くなる傾向にあるが、100%遅咲きにするわけにもいかないらしい。ヤマが外れたとき、「すべてつぼみ」という状況になり得るからだ。球根は、毎年10月末から11月中旬にかけて植える。今回、最も多いのは2万6800球を用意した「黄小町」という品種である。多くの品種は1週間から10日で散ってしまうのに対し、花持ちがいい。
今年は暖冬だったことから、根雪が早く解けてしまったため、例年より早い2月中旬に、遮光ネットをかけた。地表の温度上昇が上がらないようにすることで数日、開花を送らせることができる。7年ぶりに2月からネットを出したそうだ。
標高の高い場所で育てる花は、追加投入用。富山県花卉(かき)球根農業協同組合の協力を得て、フェアの会場から約30キロ離れた五箇山周辺で、発泡スチロール製の箱に球根を植えて育てている。開花時期は平野部より10日から2週間程度遅い。つぼみの状態を確認しながら、少しずつフェア会場周辺に運んでおき、花が終わったものの横に並べる。箱を重ねて積むことができないため、輸送の手間がかかるのが悩みらしい。
これだけ周到に策を講じても、開花時期が外れてしまうことがある。2010年、11年はフェアが開幕しても1割程度しか咲いていなかった。「遅らせることはできても、早められないのがつらいところ」と水木さん。逆に14年以降は少し早く咲きすぎたとか。13年はドンピシャ。会期中、黄小町がずっと咲き続けていた。
「球根選びからフェアが閉幕するまで、ずっとギャンブルしているような恐ろしさがあります。『ちょっと早かったかな』と思っていても、開幕後に気温が下がって花が長持ちし、救われたことがあった。逆にフェーン現象が起こると、一発で花が終わってしまうのです」(水木さん)
2016年となみチューリップフェアの会期は、4月22日から5月5日まで。開幕5日前の富山県内は、警報が出るほどの強風に見舞われた。影響が心配である。水木さんの今年の読みは当たったか、外れたか……。会場に足を運んで、確かめてみてはいかがだろうか。(ライター・若林朋子)