(※イメージ)
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 教師は文字通り「受難の時代」にあるという。仕事の急激な増加、学級崩壊、軽度発達障害を抱える子どもの増加、クレーマーと化す保護者。教師のメンタルヘルスは悪化し、うつ病になる教師が増加。その数は、一般企業の2.5倍になるとも言われている。

 明治大学教授で、「教師を支える会」代表の諸富祥彦氏は、今の教師に求められる「資質」や「力量」の要求水準は、20年前と比べると格段に高くなっていると語る。学校現場には、多くの課題が山積み。かつてのように、「学生時代にそれなりに優秀だった人が、ふつうに真面目に取り組んでいれば務まる仕事」ではなくなっているという。いじめへのずさんな対応、体罰、暴言などの教師の不祥事が注目される中、真に求められる資質を探ったのが書籍『教師の資質』だ。

 教育の現実を見続けてきた著者・諸富氏は、「九割の先生方は誠実で熱心な先生方」であると断言する。それでは、「できる教師」と「ダメ教師」の違いはどこにあるのか。諸富氏が考える「できる教師」は、二つの条件を備えた教師だ。その条件とは、「学級経営が上手で、学校に安心・安全な雰囲気を作ることができること」と「子どもたちの能力を高めることができること」。

 教師を大まかに分類すると、諸富氏は「力量の高い、優秀な教師」が2割、「得手不得手はあるものの、総合的に見れば、一般的な力量の教師」が7割、「力量の低いダメ教師」が1割となると言う。
 
「力量の低いダメ教師」の中でもさらに1%から2%の教師、つまり全体の1000人に1人が、子どもを指導することができない、あるいは常識が欠如している「教師としての資質」が疑われる人物であるという。保護者との面談の時に、子どもの良いところを言う前に、悪いところばかり並び立てる教師は、人の気持ちの分からない「力のない先生」だそうだ。

 子どもをいじめなどの問題から守るために、「親にも教師にも求められる資質」があるという。それを一言で言えば、「安心して、助けを求めることができる大人」になること。専門用語で「援助希求」と呼ばれるこの資質が、これからの学校教育、家庭教育に共通する重要なキーワードになる。子どもから「援助希求」をしてもらうようになるには、「この先生(親)は口がかたい」「この先生(親)は話しやすい。助けを求めやすい」「この先生(親)に相談したら全力で自分を守ってくれる」の3つの条件を備える必要がある。

 教師をはじめとする大人が、子どもたちから「助けを求めてもらえる関係」をどう作っていくか。これが子ども、ひいては混迷する教育現場、教師自身を救う鍵となる。