スマホやタブレット端末を持つ人がポピュラーになった今、メールマガジン(メルマガ)がブームになっている。

 火付け役は、堀江貴文氏の「堀江貴文のブログでは言えない話」。個別のコンテンツを購入する電子書籍とは違い、月額制で決まった料金(相場は数百円)をユーザーが支払うメルマガという形式を世に知らしめた。現在も年間数千万円を稼ぎ出す人気メルマガでもある。

 個人が提供する月額制コンテンツというシステムから、メルマガはファンクラブの会報に近い。堀江氏のメルマガでも、もっとも人気のあるコンテンツは堀江氏自らが読者の質問に回答するQ&Aコーナー。有名人と直接対話できる“プレミア感”が魅力になっている。

 一方、ジャーナリストの佐々木俊尚氏が発行する「未来地図レポート」は、さまざまな情報をある観点からまとめ上げて提供する“キュレーション”が最大のウリ。特にIT事情に強い佐々木氏が紹介する欧米メディアのIT系記事は、業界のトレンドを知るうえで非常に興味深い。

 この“キュレーション”は紙の雑誌における編集に近い方法論。そして最近では、こうした方向性をより推し進めたメルマガが増えている。

 その代表格が、メディアアクティビストの津田大介氏による「メディアの現場」(通称・津田マガ)だ。ツイッターの第一人者として知られる津田氏だが、津田マガではあくまで「編集部」が制作、提供している。

「メディアの現場」というタイトル通り、中身は取材記事がメイン。扱うテーマも、震災復興、IT関連、著作権など、多岐にわたる。テーマによっては外部の識者が記事を執筆する場合も多く、コンテンツの内容としてはもはや“雑誌”と大きな違いはない。

 誌面の限界がないのもメルマガの利点のひとつだ。浅草キッドの水道橋博士による「メルマ旬報」は、月に15万字を超える膨大さから「メガマガ」とも称されるほど。

「メルマ旬報」において、水道橋博士はあくまで“編集長”という立場をとっている。自身も日記(それだけでも数万字だが)を掲載するなどしているが、連載陣にも元K-1プロデューサー谷川貞治氏や小説家の樋口毅宏氏、『桃太郎電鉄』の演出などを担当したゲームクリエイターの柴尾英令氏などが名を連ねているほか、ミュージシャンの岡村靖幸氏との対談記事もある。その顔ぶれは、紙のカルチャー誌と見間違えるほど豪華だ。

 しかも、上記メルマガについては、一般的な電子書籍フォーマットであるE-PUB形式でも配信しているものがほとんど。もはやメルマガというより電子書籍の趣である。

この年末には、アマゾンの「Kindle」シリーズが日本上陸を果たし、電子書籍の本格的な普及に期待が高まっている。しかし、出版社との契約上の問題などがあり、肝心のコンテンツ量はまだ十分とは言い難いのが現状だ。

そんな状況下で、「津田マガ」や「水道橋博士のメルマ旬報」のような限りなく雑誌に近いコンテンツづくりを行なっているメルマガは、スマホやタブレット端末における有力な“読み物”として、電子書籍普及の一端を担っているともいえるだろう。

【関連リンク】
・堀江貴文のブログでは言えない話
・佐々木俊尚の未来地図レポート
・津田大介のメディアの現場
・水道橋博士のメルマ旬報