この2年、妻の苦しみはどれほどのものだったろう。国有地が私物化される犯罪に加担させられ、死を選んだ夫。さらに事実を知った検察ですら、権力側にあっさりとつき事件をもみ消した。しかも全て「終わって」みれば、権力に近い人だけが守られ、その他は易々と切られ、そしてあっという間に忘れ去られようとする現実に、どれほど苦しんだことだろう。
それでも。真実に一番近いところにいて、それ故に死を選ぶほど苦しんだ人の声が消えることはないのだ。その声を聞き、見据えることによって、私たちの未来の方向はグワーッと引っ張られながらも変わるかもしれないのだ。というか、変わらなければいけないだろう。
韓国の朴槿恵は今も拘置所にいるという。国民を欺き、役人の本分を狂わせ正さず、弱い立場の者を見殺しにし、権力を思う存分私物化する。ほぼ同じようなことをしている日本のトップが、のうのうと権力を握り続けている。暗闇の未来に引っ張られるような時代だからこそ、過去からの声にしっかり向き合い、未来を変えたい。中世と現代のハイブリッドな時間感覚で。
※週刊朝日 2020年4月3日号