財務省は6月4日、改ざんは佐川氏が主導したと認定し、動機を「国会審議の紛糾を避けるため」とする省内調査の結果を発表した。だが、佐川氏が直接指示した文言が明確に書かれていないなど具体性に欠け、数々の疑問が残る内容だった。
土地取引や公文書改ざんについて調べていた大阪地検特捜部は18年5月31日、捜査対象の38人全員を不起訴にした。検察審査会がその後、「不起訴不当」と議決し、地検が10人を対象に再捜査したが、2019年8月に改めて不起訴とし、捜査を終結した。地検は、捜査で分かった内容をほとんど公にしていない。
森友学園との土地取引の問題は、貸し付けや売却価格が妥当だったのかが本質だ。問題発覚後、様々な異例な手続きが明らかになり、会計検査院が「根拠が確認できない」と結論づけても、政府は「妥当だ」だと言い続けてきた。その説明に納得できず、取材班は関係者取材や資料の収集を続けてきた。
「改ざん」の情報は、そうした地道な取材の中でつかんだものだ。「どこかからのリークを文字にしただけ」という臆測を語る人もいたが、実際は違う。
改ざんの発覚から2年あまり。疑問は残されたままだ。土地取引は本当に妥当と言えるのか。そして、妥当だったのならなぜ文書を改ざんしなければならなかったのか。佐川氏が省内調査で何を語ったのかも明らかにされていない。
公文書の改ざんを強いられ、命を絶った財務省職員の妻が今年3月18日、国と佐川氏を相手に損害賠償を求める訴えを起こした。改ざんの詳しい経緯を明らかにしたいという願いからだ。第三者による再調査を求めるコメントも発表した。
遺族側は赤木さんが改ざんの過程を記録していたファイルが国側に残されているとして、提出を求めている。さらに佐川氏本人への尋問や、当時の財務省幹部らの証人尋問を求める方針だ。
国や佐川氏はどう対応するのか。改ざんの経緯はどこまで解明されるのか。安倍首相が再調査に応じない姿勢を貫く中、裁判の行方から目が離せない。(朝日新聞大阪社会部長・羽根和人)