その外出証明書はA4サイズで、ダウンロードして入手できる。
「『食品の購入』『職場への通勤』『銀行』などのチェック項目に記入し、納税者番号を記入して署名します。『旅行』だけは目的地の住所・郵便番号まで書かねばなりません。私もダウンロードして印刷し、ポケットに入れて店に行っています」
清水さんは店の営業を続けているが、客は通常時の2割まで落ち込んだという。小規模店では店内に入れる客は2人まで。行列は1・5メートル間隔で並ぶなど様々な条件がある。
「飲食店など年間60万ユーロ(約7200万円)以下の売り上げ規模が小さな店は、休む代わりに従業員の給与は政府が保証してくれます。うちの店とか、バルなどが対象になります」
毎日午後8時になると、各地で拍手が湧き起こる。
「これはコロナと戦う医療関係者へのエールで、連帯感を持って危機を乗り切ろうという意志です。10分ぐらい続いていますね。コロナ禍がいつ終息するのか分かりませんが、さまざまな面で社会が変わるのでは。そのうちの一つが、この拍手に象徴される『市民の連帯の強まり』ではないでしょうか。そんなことも考えています」
それでも感染者の増加が止まらないスペイン。28日にはサンチェス首相がテレビ演説で、不要不急の経済活動をやめ、労働者は2週間自宅待機するように呼びかけた。
フランス文学者の海老坂武さんは、感染が拡大する前の2月下旬からパリに滞在している。
「私がパリに来た時は、誰一人マスクなどしていませんでした。すでにフランスで感染者が出ていた3月上旬になっても、どこかアジアの病という雰囲気でした。3月6日にマクロン大統領夫妻はのんびり芝居を見ていたし、11日にもパリ中心部の広場で『3・11』の追悼集会が開かれ、人々はハグをして握手をしていました」
雰囲気が変わったのは12日。マクロン大統領が「この100年で最大の公衆衛生の危機だ」とテレビ演説してからだという。17日から全土で外出禁止令が実施された。