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人生はみずからの手で切りひらける。そして、つらいことは手放せる。美容部員からコーセー初の女性取締役に抜擢され、85歳の現在も現役経営者として活躍し続ける伝説のヘア&メイクアップアーティスト・小林照子さんの著書『人生は、「手」で変わる』からの本連載。今回は、仕事で自分の企画や意見に反対ばかりされて心が折れそうになっているひとへのメッセージです。
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世の中にはいろいろな仕事がありますが、最初はやはり「こんなものをつくりたい」という企画書から始まりませんか? でもひとつの企画がなにごともなくスムーズに実現することなど、まずないでしょう。
「反対派」は、いて当たり前なのです。重箱のすみをつつくように、企画内容に文句をつけてくるひとはいくらでもいます。
「本当にこんなので、結果出せるの?」
直属の上司が、他部署の人間が、取締役が、社長が言ってくる。そこで結果を出せなかったら、誰も評価してくれない。だからそこには「やっぱり企画をやめる理由」はいっぱいあります。
でもそんなところで自分の企画を引っ込めたり、反対派のひとたちから言われた通りに企画内容をまるまる変えてしまう、というのは「成功しないひと」のやり方です。
少し反対意見を言われたからといって「すみません、おっしゃる通りに変えさせていただきます」とへりくだるようでは、そもそも「成功」に結び付くわけがないのです。
反対派には、よく「限界」という言葉を使うひともいます。
「ええっ!? 限界だよ!」
「無理無理、限界だって」
「限界なんだよ、わかってくれよ」
私はそういうひとたちを、九州の玄界灘になぞらえて“限界灘の男”“限界灘の女”と呼んでいました。もちろん自分の心の中で、ですよ。
「あなたの言う通りのことをやろうと思ったら、商品の処方を全部変えないといけなくなるんですよ。我々はすでに限界までやっていますからね」
「こんなスケジュールで間に合うわけないでしょ。こっちはもう限界なんだって」
きた、きた、きた、きた。限界灘に飲まれてなるものか。
そこで相手に押し切られてもいけない。かといって、こちらが強硬な態度をとっても、よい結果にはたどりつきません。反対派を敵に回したところで、いいことなど何ひとつないのです。
そんなときは手の平で転がすぐらいの気分、「柳に風」で、「そうかなあ」と、まずはかわすことが一番です。そして誰よりも強力に反対する相手に、私は「なぜだめなのかを教えてください」と言って、相手の反対理由を聞くことにしています。
強力な反対者こそ、強い信念を持っているので、一番参考になるのです。
【しなやかに生きる知恵】
「もう限界だ」を連呼する“限界灘の男”や“限界灘の女”はまずは「かわす」こと