年々、赤字国債が膨らむ日本。その日本に対し、早稲田大学国際教養学部教授で生物学者の池田清彦氏は、「ねずみ講国家だ」と厳しく指摘する。


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 日本は本当に自転車操業のねずみ講国家だと思う。第二次世界大戦中に発行された戦時国債が預金封鎖とハイパーインフレで紙くずになったのに懲りて、日本政府は赤字国債は発行しない約束であった。しかし、喉元過ぎれば何とやらで二〇年でこの約束は反故になり、一九六六年、佐藤栄作首相と福田赳夫蔵相のもと、戦後最初の赤字国債が発行された。当初は確かに恐る恐るだったが、しばらくすると予算が足りなければ赤字国債を発行すればよいと居直ったのだろう。あれよあれよという間に借金は一〇〇〇兆円を超えたのはご存知の通りである。
 二〇一一年度の歳入は九二兆円余り、その内四四兆円余りは借金である。歳出のうち二一兆円余りは借金の返済金で一〇兆円程は利子である。借金を借金で返しているという最悪の構図である。
 ねずみ講は国家財政だけではない。年金も完全なねずみ講だ。政府は従業員五〇〇人超の企業で年収九四万円以上の非正規社員を厚生年金に加入させて、処遇の改善を図りたいとおためごかしの政策を発表したが、要するに年金を支払う金がなくなったので、うまいことを言って貧乏人からも徴収しようという話ではないか。高利回りとウソをついて新規の客を募り損失の穴埋めをしたAIJ投資顧問とおんなじだ。年金制度は可及的速やかに解体するのが最善だが、とりあえず今さえ騙せればそれでよいという官僚に支配されているこの国では何を言っても空しいだけか。
※週刊朝日 2011年5月4・11日合併号


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