2019年にデビュー20周年を迎え、今年キャリアの第二章をスタートした氷川きよしさん。新曲「母」に込めた母親への思い、ニューアルバム『Papillon(パピヨン)-ボヘミアン・ラプソディ-』で披露するニュー氷川きよしとは──。
「なかにし礼先生からいただいた歌詞を見たとき、涙が溢れて、どうすることもできませんでした」
氷川きよしの最新シングル曲のタイトルは「母」。3年前に作詞家、なかにし礼に委ねた歌詞が手もとに届くと、そこには見返りを求めない母親の愛、母親があってこその自分、感謝の気持ちが切々とつづられていた。2018年、明治座で行われた氷川きよし特別公演の楽屋でのことだった。
「2019年に、僕はデビュー20周年を迎えることができました。応援してくださるファンの皆さまのおかげ、そして、母のおかげです。こみ上げてくるものを抑えられませんでした」
福岡出身の氷川は、18歳のときに歌手を目指して東京へ出てきた。
「22歳のデビューまでの3年半、福岡に帰ることもできない生活が続きました。僕は一人っ子です。母に楽をさせてあげたい。母を悲しませたくない。その思いで頑張りました。デビュー曲の『箱根八里の半次郎』には、会えない母親へ、すまねぇ、とわびる一節があります。そして“歌手・氷川きよし”としての二十歳(はたち)を迎えた最初の曲で、再び母への思いを歌うことができました。よかった。母は僕の原点ですから」
レコーディング後に、電話を通して母親にも歌を聴いてもらった。
「最初叔母に聴かせたら、わんわん泣かれました。お母さんにも聴かせてあげなさい、と。母の苦労を近くでずっと見てきたからでしょう。ところが、母は意外と冷静で。僕と母は仲がよすぎて、しょっちゅう話をしていたからかもしれませんね。今も一日に3、4回電話をしています」
氷川は、自分と母親とは「一卵性双生児のように似ている」という。
「母はきらきらした艶のあるものが好き。そして、若い人が大好き。僕とそっくりです。以前、母に財布をプレゼントしました。母は今67歳。シックなデザインを選んだら、好かん!と言われちゃった(笑)。それで、艶々したエナメルの財布をほしがるんですよ。僕もエナメルが好き。好みが同じで、二人で笑い合いました。コンサート会場のバックヤードでは、母はいつも若手のスタッフとしゃべっています。若い人といると元気でる!って」