「休暇でもないのに、舞妓が実家に帰るなんて」
そうため息をつくのは、京都で老舗の店舗を営む男性だ。4月の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けて、京都府でも遊興施設や夜の接待を伴う飲食店などへの休業要請を行っていた。この影響で、京都の街の“シンボル”とも言える芸妓や舞妓が姿を消して久しいという。
いま京都には81人の舞妓と165人の芸妓がいる。花街(かがい)では、舞妓や芸妓はお茶屋に呼ばれて唄や舞を披露する。客は仕出し料理を味わいつつぜいたくな空間を楽しむわけだが、「一見さんはお断り」。なじみの富裕層らの娯楽の場でもある。
だが、コロナによる休業要請を受けてお茶屋も5月末まで一斉に自粛に入った。花街に詳しい人物がこう話す。
「厳しい修業を経て身につけた芸妓や舞妓の芸事は、京が誇る伝統文化です。それが、休業要請の項目にある『接待を伴う飲食店』に含まれるかといえば、京都府のお役所でも『判断は難しい』というスタンス。ですから5月末までは、自粛の形をとることになったそうです」