東海・東南海・南海地震が3連動する「南海トラフ巨大地震」について、内閣府の検討会が3月31日、新たな想定をまとめた。高知県黒潮町に最大34.4メートルの津波が到達し、稼働停止中の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)付近では、建設中の18メートルの堤防を超える21メートルになるという。
地震発生から2分で津波が到達する静岡県や和歌山県などは深刻だ。津波警報の発令でさえ「技術的に最速でも3分はかかる」(気象庁)という。予想津波高が7.5メートルから25.3メートルに引き上げられた静岡県下田市の防災担当者は、
「25メートルの津波から2分で逃げる方法を住民から聞かれても、答えられない」
と、戸惑いを隠さない。
最大34メートル超の津波高が想定される高知県では、潜水艦技術を応用した“地下シェルター”を建設する構想まで浮上している。
一方、独立行政法人建築研究所の都司(つじ)嘉宣(よしのぶ)・特別客員研究員は、こう指摘する。
「『最短2分』という部分が注目されているが、2分で来るのは大津波の兆候となる1メートルほどの津波。20~30メートル級が来るのは、早い地域で20~30分後です」
つまり、津波が来るからと諦めてはいけないのだ。東北大学大学院の今村文彦教授(津波工学)も言う。
「東日本大震災級の大地震では、最初の2~3分間は強い揺れに見舞われて身動きが取れません。しかし、その間に心を落ち着かせることが何より重要です。地震の後には必ず津波が来ると考え、日頃からどう逃げるかをシミュレーションしておき、揺れが収まった瞬間に動き出せるかどうかが生死を分けるのです」
※週刊朝日 2012年4月20日号