投資顧問会社AIJが、会員企業から預かった2千億円を超える出資金の大半を失っていたことが明るみになり、大問題となっている。
AIJは預り金の運用で利益を出したのは最初の1年だけで、それ以後、欠損は雪だるまのように膨らみ、解約や資金の引き出しに使う金は、新規に契約した会社の出資金を充てる自転車操業に陥っていった。損を出せば出すほど、新たな金蔓(かねづる)としての新規加入者が必要になり、その作業には厚労省OBが作るコンサルタント会社が当たっていたのだ。
この「資金が足りなくなって、なりふり構わず新規加入者を集める」という構図。実は現在の税と社会保障の一体改革にも当てはまると、テレビでコメンテーターなどを務める辛坊治郎氏は話す。
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政府は今、税と社会保障の一体改革の目玉政策の一つとして、「パートタイマーへの厚生年金拡大」を進めようとしている。
今回の改革の目的は、主婦の労働市場への参入を促し、個人単位の年金制度を確立することにある、とされているが、厚労省の本音は別のところにある。現在、既に毎年の高齢者への年金支払いが、その年の現役世代から徴収する掛け金だけでは足りずに、過去の積立金を取り崩して支払う時代に突入している。その積立金を減らさない方法として考えられたのが、新規に年金掛け金を支払ってくれる層の拡大、すなわち主婦の厚生年金加入なのだ。
しかしこの施策は、年金の将来にとっては極めて危険だ。なぜなら、厚生年金は高額所得者の年金掛け金で、低所得の加入者の年金を支える構図になっているからだ。つまり、高額所得者が増えない中で、低所得のパート主婦が国民年金から厚生年金に移行すると、将来、厚生年金の財政全体に極めて深刻な影響を与えることになる。極端な話、パート主婦は厚生年金加入で年金が増えるどころか、自分たちの加入がシステム崩壊の引き金を引く可能性があるのだ。
※週刊朝日 2012年3月23日号