あけぼの/カウンター11席のお客がオール「かつ丼」ということもめずらしくない人気メニュー。煮干しのだしで作った味噌汁と、ぬか漬け付きで1000円(税込み)(撮影/写真部・加藤夏子)
あけぼの/カウンター11席のお客がオール「かつ丼」ということもめずらしくない人気メニュー。煮干しのだしで作った味噌汁と、ぬか漬け付きで1000円(税込み)(撮影/写真部・加藤夏子)
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羽釜で炊くご飯は大盛りやおかわりが無料。黒電話がいまなお現役で活躍中(撮影/写真部・加藤夏子)
羽釜で炊くご飯は大盛りやおかわりが無料。黒電話がいまなお現役で活躍中(撮影/写真部・加藤夏子)
常連客からもらった懐かしい寝台特急列車のプレートが壁に掛かる(撮影/写真部・加藤夏子)
常連客からもらった懐かしい寝台特急列車のプレートが壁に掛かる(撮影/写真部・加藤夏子)

 今もまだ残る古き良き店を訪ねる連載「昭和な名店」。今回は有楽町の東京交通会館にあるとんかつ店「あけぼの」。

【写真】羽釜で炊くご飯は大盛りやおかわりが無料

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 かつて有楽町駅の東側には飲み屋や食堂が軒を連ねる「すし屋横丁」という場所があった。「あけぼの」はこの一角で1962年に店を構えた。

 東京オリンピックが開催され、すし屋横丁を含む駅周辺が整備されるなか、東京交通会館が開業(65年)。その数年後に店は地下の食堂街に移転し、今日までとんかつの名店として人気を集めてきた。

「いまでこそ女性のお客さまが増えましたが、オヤジがここで店を始めた頃は都庁や新聞社も近かったので、カウンターはサラリーマン一色だったようです」と話す、2代目店主の中村文造さん。

 なかでも手軽で栄養満点のかつ丼は一番人気で、高度成長期に働く男性たちの活力源となった。

 純正ラードを使って一枚一枚、目の前で揚げるとんかつは、サクッと香ばしく、油っぽさがない。とき卵が絡んだかつは分厚く、豚ロースのうまみが存分に味わえるのも魅力だ。聞けばパン粉は粗さや糖度を指定し、ほどよい食感や揚げ色をめざしているという。

 羽釜で炊いたご飯と甘辛いだしがしみたとんかつの相性も抜群。82歳の初代がいまも仕込むぬか漬けにも、昭和のノスタルジーを感じる。(取材・文/沖村かなみ)

「あけぼの」東京都千代田区有楽町2‐10‐1 東京交通会館B1日比谷公園1‐2/営業時間:平日11:00~15:00、17:30~20:00、土曜・祝日11:00~16:00/定休日:日曜。土・祝に不定休あり

週刊朝日  2020年7月17日号