三菱東京UFJ銀行が日本国債の急落を想定し、危機対策を講じた。もし「財政破綻」が日本で起きた場合、私たち一般市民にとっても深刻な影響がありそうだ。投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める「伝説のディーラー」藤巻健史氏が警告を発する。
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「私は国債など持っていないから、国債が暴落しても関係ないや」などと思わないでいただきたい。国債暴落の個人への影響はかなり大きい。日本人ならほぼ全員が国債を間接的に大量保有しているからだ。
ゆうちょ銀行は(一時の88%に比べればかなり改善されているものの)いまだ受け入れた預金の8割にあたる金額を国債で運用している。ゆうちょ銀行に限らず日本の銀行も、この20年間、景気低迷で融資が伸びなかったから、かわりに国債保有を大幅に増やした。
「預かった預金の何%を融資に回しているか」を「預貨率」といい、この10年間で25%幅下がった。その分、国債購入が増えたということだ。生命保険会社も、1980年代には資産の50%以上を融資で運用していたが、いまや13.7%に過ぎない。こんな状態で国債価格が崩れれば、預金の引き出しや保険金の支払いが心配になる。
このようなリスクが考えられる事態に対応策を講じた三菱東京UFJ銀行は賢明だと思う。
いくら「1千万円まで預金は保護される」といっても、財政が破綻してしまえば、その約束だってほごになるかもしれないのだ。
※週刊朝日 2012年2月24日号