「ビリヤードが好きです」
と言った後、言葉が次々にあふれ出る。美しく弧を描いて上がる口角に見惚れてしまう。
「キューで突いた球が、きちんと考えたとおりに走ると気持ちがいい。球を落とした後の手球がどこに行き、次のショットを行うにあたってどの位置に持っていくと有利になるか。そこまで考えながらプレイできるようになったら、断然おもしろくなりました」
ビリヤードは、自分が失敗しない限り主導権を握り続けることができるゲームだ。いかにミスショットをしないかで、勝敗が分かれる。一定の精神状態を保ち続けることは、演技をする上でプラスになることもある。だからビリヤードが好きなの?
「そういうことではないです。常に僕は自然体なんで、頭で演技を考えることはないんですよ。ビリヤードと演技の主導権、僕の中では接点がありません」
思いっきり否定された。
昨年6月、初めての舞台「星の大地に降る涙」に挑戦した。歌にダンスにアクション……経験は全くのゼロではないが、無に近い。そんな状態も楽しめた。
「稽古では殺陣師についてもらって、その場で実技指導をしてもらいます。体づくりはしていないんですが、気がつくと自分のものになっています。体もきちんと動きます。動かさないと終わらない、そう思って必死なのかもしれません。仕事をしていくなかで、殺陣を含め自分ができることが増えていっているなと、最近いろんな場面で実感するようになりました」
7歳でデビューした。それからは自分ができることを一つ一つ、確実にこなしてきた。慌てず、構えない。器用な男は、まっすぐな心で、すべての演技を吸収しながら前進してきた。尊敬してやまないのは小栗旬だ。
「ドラマ『貧乏男子 ボンビーメン』で共演してから、学ぶことばかりです。舞台やドラマ、映画で見せる並外れた集中力と、迫力ある演技。観客すべての瞳を独占するカッコよさはスゴイ」
今、一番やりたいことは農業。自分が作った野菜で料理を作るのが夢だ。終わる時間が決まっていた舞台期間中は、自分で料理をしていた。
「土いじりに、すごく興味があります。レシピ本に載っていた春キャベツを丸ごと焼いた料理は、お気に入りの一品。バーニャカウダは、毎日食べてもいいくらい好きです」
茨城生まれのせいか、納豆も好きだという。砂糖を入れたら美味しいよと、同郷人としてアドバイスしてみた。
「今度やってみます。いいこと聞いたな」
恋愛でも気取らない。好きになる女性は年上が多い。