餃子の王さま/手前が「王さまの餃子」(420円)、奥は「肉餃子」(500円)。テイクアウトも可。税込み (撮影/写真部・東川哲也)
餃子の王さま/手前が「王さまの餃子」(420円)、奥は「肉餃子」(500円)。テイクアウトも可。税込み (撮影/写真部・東川哲也)
江戸っ子気質の3代目店主の佐々木光秋さん。店は浅草の仲見世近く (撮影/写真部・東川哲也)
江戸っ子気質の3代目店主の佐々木光秋さん。店は浅草の仲見世近く (撮影/写真部・東川哲也)
いまと同じ場所に2階建て家屋で創業。餃子は一皿50円で提供していた (撮影/写真部・東川哲也)
いまと同じ場所に2階建て家屋で創業。餃子は一皿50円で提供していた (撮影/写真部・東川哲也)

 今もまだ残る古き良き店を訪ねる連載「昭和な名店」。今回は浅草の「餃子の王さま」。

【写真】江戸っ子気質の3代目店主の佐々木光秋さん

*  *  *

「うちは明治の頃までは代々ハンコ屋だった。戦後、まだ浅草に焼き餃子の専門店がなかった時代に、おじいさんが始めたんです」と話す、浅草「餃子の王さま」3代目の佐々木光秋さん。

 1954年に「餃子や」という名前で創業。店は繁盛し、ある日お客が「こりゃ餃子の王様だねっ」と言った言葉がそのままいまの屋号となった。

 餃子のレシピや焼き方は創業当時と変わらない。定番の「王さまの餃子」は、驚くほど細かく切ったキャベツやニラがぎっしり詰まった個性派。野菜だけかと思いきや、肉が高級品だった時代にほんの少しの豚ひき肉を混ぜてつなぎにした。一方、30年ほど前から提供する「肉餃子」は、豚ひき肉を主役に玉ネギの甘みを加えている。

 いまも作り置きはせず、注文が入ったら、カウンターで手際よくあんを包み、鉄のフライパンで蒸し焼きに。製麺所と何度も試作を重ねて考案した皮は薄めで焼き目が香ばしく、歯切れがよい。包みたて、焼きたての餃子は、外はパリッと中はジューシー。冷えたビールがうまさを倍増する。

 近頃、浅草もコロナの影響で客足が心配されるなか、長年、常連客に愛される老舗の底力で街に元気を与えてくれそうだ。

(取材/文・沖村かなみ)

「餃子の王さま」東京都台東区浅草1‐30‐8/営業時間:11:00~14:00L.O.  16:00~20:00L.O./定休日:火

週刊朝日  2020年8月7日号