多くの風俗店が立ち並ぶ東京・新宿の歓楽街。特定の業種で働く人々を行政サービスの対象から除外することは合理的な判断と言えるのか、司法の判断が注目される (c)朝日新聞社
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AERA 2020年9月14日号より

 コロナ禍の中、国が打ち出した補助金などの対象から性風俗業者が除外された。政府の判断に合理性はあるのか。司法の場で議論が始まる。AERA 2020年9月14日号で掲載された記事を紹介。

【コロナ禍対応の主な給付金や支援金はこちら】

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「職業差別だとはっきりさせなければ、今後も別の災害などが起きたときに同じように扱われてしまうと思い、裁判で国と争うことにしました」

 西日本のデリバリーヘルスの経営者は取材にこう話した。

 この経営者が争おうとしているのは、新型コロナウイルスへの対応として経済産業省が行っている「持続化給付金」と「家賃支援給付金」の支給についてだ。一部の性風俗の関係者が対象外となっている。

 コロナ禍で半年近く赤字が続く中、従業員向けの宿泊所の確保をやめたり、広告費を削ったりしてなんとか営業を続けている。コロナの不安だけでなく、社会からのけ者にされたような悲しみや怒りにも向き合わされているのだという。

 電通などへの事業発注の不透明さでも批判を浴びた持続化給付金は、新型コロナで経営が悪化した中小企業などに対して最大200万円を支援するもの。一方、家賃支援給付金も売り上げが減った事業者向けに、最大600万円を支払う制度だ。いずれも「不給付要件」としてこう定められている。

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する『性風俗関連特殊営業』又は当該営業にかかる『接客業務受託営業』を行う事業者」

■政府は「ずっと対象外」

 セックスワーカーらの支援団体「SWASH」の要友紀子代表(44)が説明する。

「フリーランスのセックスワーカーは対象とされていますが、一方で性風俗店やラブホテル、ストリップ劇場などの事業者側が対象から外されています」

 弁護団メンバーの亀石倫子弁護士は近く東京地裁に国を相手取り提訴すると話す。裁判では、憲法で保障される平等原則に違反しているかどうか、国側が裁量権を逸脱しているかどうかが争点となる見通しだ。

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