1900年に人々が考えていたことは、1915年には変わっていた。1920年に人々が思い描いていたことは、1935年にはそのとおりにならなかった。

 これは、投資家にとってはもちろん、現代を生きていく誰にとっても強力なメッセージだ。

 例えば、1991年にソビエト連邦(現ロシア)は消滅したが、その15年前には「冷戦」が声高に叫ばれることはあっても、ソ連消滅を想像した人はいなかった。

 ソ連消滅を目撃して、多くの人が共産主義がこの世から消え去ってしまうと考えた。ところが、それから15年どころか30年近くたつのに、いくつかの共産主義国はちゃんと生き残っている。

 企業も、この歴史の鉄則から逃れることはできない。どれほど影響力があり、立地に恵まれても、世界は変わっていき企業は消えていく。

 アマゾンもグーグルも素晴らしい会社だ。だが、50年後にどうなっているかはわからない。すでに存在そのものが消えているかもしれない。

 確実に言えることは、時代が変われば、企業が展開する事業の役割も変わるということだ。

 だから、2020年の今、常識と考えられていることは、2035年にはすべて違っていたことになる可能性がある。

ジム・ロジャーズ/1942年、米国アラバマ州出身の世界的投資家。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び「世界3大投資家」と称される。2007年に「アジアの世紀」の到来を予測して家族でシンガポールに移住。現在も投資活動および啓蒙活動をおこなう

(取材/朝日新聞シンガポール支局長・西村宏治 構成/本誌・西岡千史 監修/小里博栄)

週刊朝日  2020年9月18日号

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