あなたの周りにムダにやる気を下げてくる人物はいないだろうか? 経営・組織戦略コンサルタントの西野一輝氏は、こうしたやる気を下げてくる人物への対策を『モチベーション下げマンとの戦い方』(朝日新聞出版)として上梓した。今回登場するモチベーション下げマンは「上司が残業するのを後目に、定時に帰る部下」について。
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時間管理をしっかり行い、残業は極力しない。定時で帰るのも大賛成……と上司は表面上言っていても、内心「何で早く帰るの?」と戸惑いや苛立ちを感じている人が多いのかもしれません。
食品メーカーで商品企画の部門の管理職をしているDさん。自分が若手社員のときには上司より先に帰るなんて考えられなかった環境で育ったタイプ。
もちろん、時代が変わり、部下が先に帰ることを「ありえない」とまでは思っていませんが、今日中に頼んでいた仕事があっても「時間になったので、お先に失礼します」と帰るケースが出てきたことに納得ができない様子。
そもそも、今日中に仕上げる約束を守れないで帰るなら「すみません。明日にはしっかり仕上げますので……」と反省や恐縮する姿勢があってしかるべき。仕事に対する責任感が足りないので、指導すべきと感じているようでした。
あるいは別の観点から戸惑いを解説してくれたのは広告代理店に勤務しているFさん。営業部門の管理職をしていますが定時で帰る部下をみていて「もったいない」と感じているとのこと。
若手時代は、時間をかけて仕事に取り組まないと身につかないことがたくさんあります。例えば、コンペに負けない提案書を作成するなら、過去の提案書を参照したり、業界研究をしたりするなど。
こうした将来のための勉強ともいえる時間を必要な時期にとらないと、営業としての基礎が不十分なまま求められる仕事のレベルがあがり、期待に応える成果が出せない状態になる気がしてならない。だから、時間を気にせず仕事に打ち込んでほしい。それがもったいないと感じる理由のようでした。
このように観点は違いますが、定時に帰る若手社員のスタンスに疑問を感じている上司はたくさんいるのは間違いないでしょう。
ただ、いまどき、残業を強要する上司になりたい人はあまりいません。登場した二人に「残業を強要するのですか?」と聞いてみると、返答に苦慮していました。