「なんで新型コロナウイルスで苦しい時期に学費を値上げするのでしょう」
こう話すのは、今春に大学医学部を受験する予定の女性(19)だ。女医の育成を目的に創設された名門・東京女子医科大が来年度入学で、医学部の学費を値上げすることが明らかになった。その額は6年間で1200万円。学費総額は約4600万円にも上る。
大手予備校の河合塾によると、私大医学部の学費総額の平均は約3200万円。東京女子医科大は、川崎医科大の4700万円に次いで2番目に高くなった。
「こんな値上げは聞いたことがない」「女子医ショック」と予備校関係者も驚く大幅値上げだが、東京女子医科大関係者の間でも疑問の声は上がっている。同大学病院はコロナ禍での経営悪化を受けてボーナスを支給しないと決めたが、看護師らが退職の構えを示し反発。その後、病院側は1カ月分のボーナス支給に転じた。ある職員は値上げの背景についてこう語る。
「経営が悪化する中で理事長室や理事室の移転に6億円もかけようとする一方で、ボーナスを不支給にしようとした。それができなくなり、新たに学費に目をつけたのでは」
騒動について予備校関係者は「もはやお家芸」と苦笑気味に話す。同大学病院は医療事故を起こし、2002年と15年に高度な医療を提供しているとされる「特定機能病院」の承認を取り消されている。患者だけではなく、受験生からも評判を大きく落とした。
「病院ではOGらの派閥と男性医師らの派閥があり、騒動が起きるたびに足を引っ張り合っていると言われている。今回の値上げ騒動も派閥争いがあるのでは。それに振り回される在学生や受験生はかわいそうだ」(前出の予備校関係者)
同大に値上げの理由などについて尋ねると、「回答を控えさせていただきます」(広報室担当者)。
私立医学部・歯学部専門予備校メルリックス学院の鈴村倫衣学院長はこう語る。
「最近の受験生は騒動があると受験を控える。これまでは値上げをしても特に説明をしないことが通例だったが、今回は額も大きい。優秀な受験生ほど敬遠するでしょう。説明責任を果たさないと、大学のブランドも大きく傷つきかねません」
名門大の姿勢が問われている。(本誌・吉崎洋夫)
※週刊朝日オンライン限定記事